望月 雄太 | 採用

YUTA MOCHIZUKI

望月 雄太

ニックネーム もっちん,もっちー
生年月日 1981/8/21
出身地 神奈川県
星座 しし座
血液型 B型
略歴 桐蔭学園高校同志社大学
代表歴 日本代表(7cap)
在籍年数 20

望月 雄太物語

 ひと言で表現するなら、「あったかい人」である。東芝ブレイブルーパス東京の採用を担当する望月雄太だ。
 後輩たちからは、親しみとともに「もっちーさん」と呼ばれる。相手を思いやる温かさと優しさに溢れているから、人間らしさを込めて「あたたかい」ではなく「あったかい」と表現したくなる。
 2004年に入社し、主に6番や8番を着けて、チームのために身体を張り続けた。17年2月に現役を退いた。
「最初の6年間ぐらいはなかなか試合に出られなくて、すごく苦労したところがありましたが、日本代表に選ばれたりとか、トップリーグで100試合出させてもらったりとか、かなり充実した現役生活を過ごさせてもらいました。最後の1年は膝に大けがを負ったあとだったこともあり、後輩たちに心配されるぐらい満身創痍でした。自分のなかでの軸は『何をしたらチームにプラスになるのか』で、このまま続けるよりも現役をやめて違うことをするほうが、チームにとってプラスになるのではと考えました。それで、当時の瀬川監督に『現役を引退してFWコーチをやらせてもらえませんか』と、お願いしました」
 ところが、FWコーチはすでに決まっていた。
「瀬川監督からは、採用担当をやってほしいと言われまして。まったく予想していなかったので、ラグビーを離れて社業に専念するのか、チームに残るのかという岐路に立たされました。そのときにしかできないことをやりたい、というのが自分のなかにあり、現役当時と同じように何をしたらチームにプラスになるのかを考えました。長く在籍してきた自分なりに色々なことを感じていて、もう一度優勝できるメンバーを揃える必要がある。その最前線の場所を任せていただけることに誇りを感じて、ぜひやらせていただきますとお答えしました」

 真新しい意欲に満ちた採用担当は、いきなり猛烈な向かい風にさらされる。親会社の東芝が再建の途上にあり、メディアに厳しく報道されていた。東芝を避けるような空気が、大学ラグビーの関係者に広がっていた。
「たとえるなら鉄砲を持たず、竹やりすら持てず、割りばしで戦場へ出ているようなものでした。採用担当としての1年目は、すでにふたりの大学4年生の加入が決まっていたのですが、会社の影響から断られまして。ある大学の監督からは、『そんなに頑張って来なくてもいいぞ。お前のところのチームはなくなっちゃうんだろ』と言われたこともありました。色々なことがありましたけど、そんなときは練習を横で見たりして、チームのなかに自分を置くことが一番の支えでした。ラグビーに一生懸命取り組んでいる選手たちのために、自分も頑張ろうと」
 大学の練習に通い、試合会場へ行き、合宿にも足を運んだ。「誠意」という目に見えないものを、望月は必死に積み上げていく。
「東芝ブレイブルーパス東京の良さを、誰よりも知っているのは自分だという自負があります。チームのいいところを説明するのは誰にも負けないし、チームに合っている選手を獲ってくることは、チームの雰囲気を一番分かっている自分にしかできない。そう思いながら、仕事をしていました」

 東海大学から22年度に新加入した木村星南は、「たまたま望月さんが観に来ていた朝練で、スクラムが良かった」ことがきっかけだったと言う。当時の彼にとっては「たまたま」だったかもしれないが、その「一瞬」を見逃さないために、望月は時間を削り出しているのだ。
 意中の選手には、練習に参加してもらう。20年度新加入の眞野泰地や21年度新加入の小鍜治悠太らとは、そうやって相思相愛の関係を築いた。どちらも複数のチームから勧誘を受けており、当初は他チームを選ぶつもりだった。しかし、練習参加をきっかけとして、東芝ブレイブルーパス東京へ一気に気持ちが傾いたのだった。
「東芝ブレイブルーパス東京には人を育てる文化があります。我々は雑草集団と言われていて、大学のエリートが集まるようなチームではありません。そういうチームが勝つには、人を育てなければいけない。それは、70年を越える歴史で、脈々と受け継がれてきたものです。私も採用にあたっては、『間違いなくどこのチームよりも成長できます』と説明しています」

 採用担当としての望月の仕事は、チームと選手を結びつけることだけではない。加入後の選手たちにも、さりげなく気を配っている。
「コーチングスタッフは高いレベルで仕事をしているので、私はメンタル的なところでちょっと声をかけるとか、ですね。自分は入団前から選手を見ているので、僕のほうが選手は分かっている自負がありますから、『最近、どうだ』みたいな声がけは継続してやってきました。そこは大事にしてきたのに、ある選手が『最近、望月さんが話かけてくれないんですよ』と漏らしていると聞いたときは、すごく悔しかったですね。自分が獲ってきた選手がキツいときは、やっぱりサポートしたいので」
 新しい選手を採用すれば、勇退する選手もいる。望月自身が採用した選手で、すでにチームを離れた選手もいる。「自分が獲ってきた選手はやっぱりかわいいんです」と表情を崩しながらも、自らを叱咤して非情な決断を下す。
「花束と死に神の鎌を持っているのが、僕の仕事です。ウチのチームに来てくださいとお願いをしながら、選手の入れ替えをしていかなければならない。そこはやっぱり特殊です。だからこそ、チームの将来像をきちんと描きながら勧誘をして、勇退する選手についても決断をしなければいけない。フラットな立場で、誠実に、正直に、対応していかなければならないと思っています」

 採用担当ならではの充実感とは、どのようなものだろう。望月の表情が、ぱっと明るくなった。
「ふたつあります。まずは、誘った選手が我々のチームを選んでくれること。とくに多くのチームから誘われている選手が来てくれたら、やっぱり嬉しいですね。もうひとつは、加入してくれた選手が、スタートで出るようになったとき。それは、自分の目が間違っていなかったということでもありますので」
 現役時代の望月は、黄金の日々を過ごした。そして、かつて自分が味わった歓喜は、再び手の届くところに来ている。
「自分が連れてきた15人がスタートで出て、東芝ブレイブルーパス東京が日本一になってくれたら。採用担当としてはもう、思い残すことはないですね」
 絶望に鍛えられ、希望に動かされてきた男は、そう言って柔和な笑みを浮かべた。

(文中敬称略)
(ライター:戸塚啓)

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