【物語りVol.148】最後まで「STAY HUNGRY」のマインドで

■相手に押し込まれた時間帯も「学びの機会」に
NTTジャパンラグビーリーグワン2024-25 第17節の相模原DB戦が、5月3日に相模原ギオンスタジアムで開催されました。東芝ブレイブルーパス東京は前節終了時点で3位ですが、今節で首位の埼玉WKと2位のS東京ベイが対戦するため、今節の結果次第で首位または2位に浮上することができます。
試合開始早々の3分にトライを許しますが、22分にSOリッチー・モウンガ選手、28分と31分にCTBロブ・トンプソン選手、34分にCTBセタ・タマニバル選手がトライを決めます。モウンガ選手が4本のコンバージョンキックのうち3本を成功させ、前半を26対7で折り返しました。風上のコンディションを考慮したモウンガ選手のエリアマネジメントが、スコアにつながっていきました。
後半もWTB森勇登選手、FB豊島翔平選手、FLシャノン・フリゼル選手がトライを奪い、後半16分までに45対7とリードを拡げます。
しかし、22分から28分まで3連続トライを喫し、コンバージョンキックも決められて45対28まで点差が詰まります。ホストチームが風上も生かして勢いを生み出しましたが、その後はスコアを許すことなくこのままのスコアでゲームを締めました。
NO.8リーチ マイケル選手は、風の影響があったことに触れながら、押し込まれた時間帯をこう分析します。
「いいディフェンスをしても、トライを取られることはあります。トライを取られた時間帯はボールがファンブルするとか、うまくプレーできないネガティブなプレーが続きました。もちろん、立て続けに3トライを許すのは、良くないことです」
トッド・ブラックアダーHCは、相手の攻撃を讃えました。
「三菱さんがあのようなアタックができるポテンシャルを持っていることは、試合前の段階で予測していました。いい学びが見えた時間帯だったかなと思います」
勝敗や試合内容を受け止めつつ、学びを積み重ねていく。その姿勢は、決して変わることがありません。

■モウンガ選手は「キックの調子はいいですね」
この日の勝利により、東芝ブレイブルーパス東京はレギュラーシーズンの成績を14勝1分2敗としました。プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたモウンガ選手は、松永拓朗選手が不在の前節に続いてコンバージョンキックを担いました。
強風のなかで7本のうち5本を成功させたキックのフィーリングについては、「いまのところ調子がいいですね」と話します。「ただ、拓朗もずっと調子が良かったので、戻ってきたらまた蹴るんじゃないかな」と、松永選手への信頼も口にしました。
この試合で2つのトライを決めたロブ・トンプソン選手は、前節にトップリーグとリーグワン通算で50キャップを達成しています。
「日本に来て5シーズン目になるので、ちょっと時間がかかったかなという印象です。東芝ブレイブルーパス東京という素晴らしいチームで50キャップを達成できて、その試合に勝つことができたのは嬉しかったですね。もちろん、今日の勝利も良かったですよ」
試合について振り返ると、やはり風の影響をあげました。
「前半は風上をうまく使えましたが、後半は相模原DBもうまく風上の状況を使ってきたことで、試合の流れが大きく変わりました。相手はモメンタムを持てたことによって、自分たちのプレーをより一層信じて、やりたいプレーができるようになったのでは。ホームのスタジアムで戦い慣れている、ということもあったと思います」

■前節50キャップ達成の佐々木選手は終盤に…
FL佐々木剛選手も、前節の試合で50キャップを達成しています。
「自分としてはわりと早いタイミングというか、思っていたよりも早く50キャップを取れたなと思っています。自分がこのチームに入った当時から、(リーチ)マイケルさん、トクさん(德永祥尭)、ヒロキさん(山本浩輝)さん、マット・トッド、いまならノニ(シャノン・フリゼル)と、すごい選手ばかりです。自分は下積みをして色々と吸収しながら、少しずつキャップを重ねていけたらと考えていました。色々な幸運もあってここまで来られたのかな、と思います」
後半35分に伊藤鐘平選手と交代しましたが、そのタイミングでトンプソン選手がHIAで退いたため、佐々木選手が急きょウイングのポジションに入りました。
「2年前か3年前の鹿児島でやったことがありますが、久々ですし、日頃から練習をしているわけでもないので、すごくドキドキはありました。ただ、試合のクロージングというか最終盤だったので、あまり役割はなかったです」
最後に「楽しかったです」と、笑顔を浮かべました。

■首位に立っても自分たちに矢印を向けて
同日行なわれた埼玉WK対S東京ベイの試合は、引分けに終わりました。この結果、東芝ブレイブルーパス東京が勝点66で首位に立ち、埼玉WKが勝点66で2位、S東京ベイが勝点64で3位となっています(勝点が同じ場合、勝利数が多いチームが上位)。
次節の横浜E戦に勝利すれば、プレーオフトーナメントに準決勝から出場できる2位以内を確保できます。2位と3位では大きな違いがありますが、選手たちは表情を変えることなく前を向きます。
FB豊島翔平選手は、「前節の前もチームのみんなで周りのことは気にせずに、自分たちがコントロールできることに集中しようと話しました。次の試合もこれまでと変わらずに準備をしていきます」と、冷静に言葉を紡ぎます。モウンガ選手も「ひとつずつ勝っていくしかないので」と、気持ちの揺らぎを感じさせません。「次の試合もしっかり勝つ、そのためにしっかり準備をするだけですね」と、まとめました。
プレーオフトーナメントでの自分たちの立場は、自分次第で決めることができる。だからこそ、佐々木選手も「もう一度自分たちにフォーカスします」と話します。
「自分たちのやるべきことをやれば、プレーオフトーナメントのいい場所に入れる。今日の試合では自分たちのエラーから相手の勢いを与えてしまう場面もあったので、そういうところをしっかり詰めて、スキを見せない、甘くならないように。次の試合まで練習していきます」
トンプソン選手は、「STAY HUNGRY」と言葉に力を込めました。
「今日の時点で首位に立ったからといって、もちろん満足はしていません。次の試合も、貪欲に勝利を求めていく。そのために、自分の仕事をひとつずつやっていきます」
レギュラーシーズン最終節となる次節は、今シーズン最後のホストゲームです。試合前から様々なイベントが催され、試合後にはセレモニーも行なわれます。
ONE Lupusのみなさんとともに勝利を分かち合い、プレーオフトーナメントへ向かっていく。そのために、最高の準備をする。東芝府中グラウンドで流す汗が、試合後の歓喜へつながっていきます。
(文中敬称略)
(ライター:戸塚啓)

【連載企画】東芝ブレイブルーパス東京 「物語り」
・物語り一覧はこちら
次戦のホストゲームは、5/10(土)に秩父宮ラグビー場にて、横浜キヤノンイーグルスと対戦します。
リーグ戦も最終戦となり、プレーオフの組み合わせにも大きく影響する重要な一戦となります。
会場で皆さまの熱いご声援をよろしくお願いします!!