【物語りVol.152】ホストゲームのシーズン平均観客動員が1万人を突破

■選手主導のラグビー体験が好評
5月8日、東芝ブレイブルーパス東京は定例記者会見を開きました。「世界有数のユニークなラグビークラブ」を目ざすとの志を掲げ、トッド・ブラックアダーHCや選手たちの声を広く届けながら、事業会社としての取り組みを定期的かつ積極的に発信しているのです。
最初に荒岡義和代表取締役社長が、3月のホストゲームを事業面から振り返ります。
今シーズン6試合目のホストゲームとなった第12節の埼玉WK戦は、秩父宮ラグビー場に16937人の観衆を集めました。リーグワン開幕以降のホストゲームでは、過去最多となりました。
24-25シーズンのレギュラーシーズンに秩父宮ラグビー場で開催されたリーグワンの試合のなかでも、ゴールデンウイークに行われたS東京ベイ対埼玉WK戦などを抑えて最多です。この日の指定席は完売でした。
荒岡社長が言います。
「こういったゲームを行うことが、リーグワン発足時に我々が描いていた絵でした。それが実現できるようになってきたのかな、と感じています」
その埼玉WK戦では、ルーパスガーデン(ゲート前広場)でのラグビー体験コーナーに、選手たちのアイディアが反映されました。荒岡社長が説明します。
「選手とスクラム、モールを体験するのは、女性も積極的に参加してくださって、大変な人気でした。ジャッカルもやったのですが、これはちょっと時間がかかるということが分かりまして、今後の検討材料となりました」
また、ワインショップENOTECA(エノテカ)のキッチンカーが好評でした。用意されたワインがすべて完売となり、5月10日のホストゲームでも出店となりました。

■札幌でのホストゲームは雪に見舞われながらも
3月30日のホストゲームは、大和ハウス プレミストドーム(北海道)で行われました。試合当日の札幌は雪に見舞われ、ドーム周辺の道路は真っ白に染まりました。
「天候の影響を受けないか心配していたのですが、それでもたくさんの方にお集りいただきました。天候に左右されないドームのありがたみを、非常に強く感じたゲームでした」
この試合では「観客動員8000人を目標」としました。実際の来場者数は7206人で、惜しくも届きませんでしたが、24年4月に開催されたS東京ベイ対神戸Sの6300人強を超えることができました。
三重Hとの試合前には、女子チーム『Brave Louve(ブレイブルーヴ)』が前座試合を行ないました。北海道高校女子選抜、北海道バーバリアンズ ディアナとの試合には、ロブ・トンプソン選手、セタ・タマニバル選手の奥様が出場しています。
荒岡社長は「夫婦揃って活躍してくれているという、とても微笑ましいというか、一生懸命にラグビーを愛してくれています」と笑みを浮かべます。ファミリー感の強い東芝ブレイブルーパス東京らしいトピック、と言うことができるのでしょう。
4月12日のホストゲームは、リーチ マイケル選手が150キャップを達成した一戦となりました。試合前のルーパスガーデン(ゲート前広場)では、リーチ選手への寄せ書きのコーナーが設けられました。ONE Lupusのみなさんが色とりどりのペンで思いを込めた横断幕は、リーチ選手を囲んだ試合後の記念撮影でお披露目されました。対戦相手の静岡BRの選手も写真に納まったのは、ラグビーの素晴らしさを示すものであり、誰にでも愛されるリーチ選手の人柄が分かるシーンとなりました。

■リーグワン観客動員上位4試合のうち3試合に絡む
最終節を前にした定例会見の時点で、東芝ブレイブルーパス東京はリーグワンで3番目に多い観客動員を記録しています。荒岡社長は「自分たちの手元の集計で」と断りを入れたうえで、説明をしていきます。
「昨シーズンのディビジョン1の平均入場者数は、8929人でした。今シーズンは(17節終了時点で)7600人から7700人ぐらいです。リーグワン全体で15パーセントほど減少しているなかで、我々は昨シーズンの平均10045人を若干ではありますが上回っています。リーグワン全体として落ち込んでいるなかでは、健闘しているのかなと感じています」
今シーズンは鹿児島や札幌でホストゲームを開催しました。クラブにゆかりのある地域でファンを掘り起こしながら、観客動員を伸ばしました。また、年末年始にホストゲームが続くなど、集客が難しい条件にも直面しました。
そうしたなかで、昨シーズンとほぼ同レベルの有料入場者数を記録し、最終的に1試合平均10124人という数字を残しました。荒岡社長は「昨シーズン優勝して、今シーズンも上位で戦ってきたことがプラスに働いたと思いますが、クラブとして地力がついてきたのでは」と話します。ファンクラブ会員も昨シーズン比でおよそ2割増えていることからも、その肌触りに間違いはないのでしょう。
ちなみに、レギュラーシーズン最多の観客動員を記録したのは、第11節のトヨタV対東芝ブレイブルーパス東京戦の24165人でした。2番目は開幕節の横浜E対東芝ブレイブルーパス東京の22871人です。3番目も開幕節の東京SG対埼玉WK戦の20263人で、4番目が東芝ブレイブルーパス東京のホストゲームの埼玉WK戦です。
上位4試合のうち3試合に、東芝ブレイブルーパス東京が絡んでいます。昨シーズン覇者として挑んだ今シーズンは、リーグワン全体の注目後アップにも貢献したと言うことができそうです。

■狙われる立場から逃げることなく
荒岡社長の登壇に先駆けて、トッドHCがマイクを握っています。その一部は物語りVol.149に掲載されていますが、ここでは今シーズンのチームの戦いぶりについて、トッドHCがどのように考えているのかを紹介していきます。
「昨シーズンは下馬評で言うと必ずしも上の立ち位置ではないなかで、優勝という結果を残しました。今シーズンは狙われる立場、追いかけられる立場で、各チームが我々にベストゲームをぶつけてきた。そのなかでも、選手たちは逃げることなく、むしろ相手を迎え撃つ準備がしっかりできていた。そういう試合を重ねることで、レジリエンスも、試合における適応能力もついた。長いシーズンでは敗戦もありましたが、そこからも勝った試合より多くの学びを得ることができました」
今シーズンは埼玉WK、S東京ベイとの三つ巴が最終節まで続きました。そのなかでレギュラーシーズン1位を勝ち取ったことにも、トッドHCはチームの成長を感じているようです。
「リーグワンのレベルがすごく拮抗してきて、トップ3のチームが勝点2差で最終節を迎えました。そういった高い競争力のなかで結果を残せていることも、我々が強くなったと言える理由のひとつではないでしょうか」
今シーズンの東芝ブレイブルーパス東京は、当事者でしか感じ得ない王者としてのプレッシャーや重圧を、フィールドの内外で受けてきました。そのなかで、10-11シーズン以来となるレギュラーシーズン1位をつかんだのです。
自分たちに矢印を向け続け、一戦必勝のメンタリティで戦ってきた積み重ねは、いよいよ、ここから、真価を発揮するのでしょう。
(文中敬称略)
(ライター:戸塚啓)

【連載企画】東芝ブレイブルーパス東京 「物語り」
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次戦は準決勝として、5/24(土)に秩父宮ラグビー場にて 準々決勝(静岡BR vs 神戸S)の勝者 と対戦します。
会場を赤く染めていただき、皆さまの熱いご声援をよろしくお願いします!!