【物語りVol.188】 HO アンドリュー・マカリオ

25年度の新加入選手として、アンドリュー・マカリオは東芝ブレイブルーパス東京の一員となった。藤井淳アシスタントGM兼採用から「非常に経験値が高い」との紹介があったように、スーパーラグビーのクルセイダーズとハイランダーズでプレーし、23年からは花園近鉄ライナーズに在籍していた。
「26年の1月で34歳になりましたが、このチームでは加入1年目の立場です。まずは信頼を勝ち取らないと、自分の言うことに重みも出てきません。それを理解したうえで、ある程度リーダーシップを期待されているのだろうな、という自覚もあります」

愛称ドゥルーザーのチームと向き合う姿勢を、同じHOの橋本大吾は「トップカテゴリーでやってきたこれまでの経験を、惜しげもなく伝えてくれている。人間としての器の大きさを感じる」と評価する。HO最年少の日吉健も「常に鼓舞してくれます。ミスしたり結果がうまくいかなくても、ポジティブな声がけをしてくれるので、次のプレーに生かせます」と言葉を弾ませる。
ドゥルーザー自身は、「色々と試行錯誤しながらです」と控え目だ。
「これを一緒にやってみようとか、こうやってみたらいいんじゃない、といった感じで、アプローチをしています。僕の働きかけに対して、選手たちが新たな気づきとして持ち帰ってくれたと感じ取れる瞬間もあります。とてもやりがいがあって、このチームに来て良かったなと思いますね」
そう言って、日本人選手の姿勢に触れる。
「学ぶ意欲に溢れていると感じます。新しいことにも、ためらわずに前向きに取り組む。もうひとつ触れるべきは、試合に出ている、出ていないに関わらず、チームのために全力を尽くす姿勢を、日本人選手から強く感じます」

チームにはスムーズにフィットした。すでに関係性を築いていた外国人スタッフや選手が、ドゥルーザーを進むべき方向へ導いてくれた。
「トディ(トッド・ブラックアダーHC)の経歴については、もちろん知っていました。ジョシュ(ジョシュア・シムズFWコーチ)とは20代前半から仕事をしてきて、自分をより高いレベルへ引き上げてくれたコーチのひとりです。リッチー(・モウンガ)とセタ(・タマニバル)はクルセイダーズで、ノニ(シャノン・フリゼル)はNPCのタスマンで一緒にプレーして、スーパーラグビーで対戦もしました。MC(マイケル・コリンズ)とも何度も対戦しています。それぞれのバックグラウンドをある程度理解しているし、グラウンド外でのつながりもすごく深いので、信頼して戦えるチームメイトたちです。どういうラグビーをするのか、どのレベルまでディティールを突き詰めるのかというところは、なんとなく想像することができていました」

日本人スタッフの献身性にも敬意を抱く。
「モリタさん(森田佳寿コーチングコーディネーター)はホントに情熱を持って、アタックをコーチングされています。細部を詰める情熱はすごい。『何も逃すことなく突き詰めていこう』という姿勢なので、自分もこのチームのラグビーに安心して身を任せることができます。森田さんだけでなく、他のスタッフの仕事ぶりも素晴らしいですね。自分にも何か貢献できる部分があったら、知識なり経験なりを還元したいと思わせてくれる集団です」
知識や経験をチームに落とし込み、スキルアップを促すアドバイスをしながら、ひとりの選手としても磨きをかける。34歳となった現在も、立ち止まることはない。
「その週のアタマに、試合へ向けて意識していく自分のテーマを決めます。それは毎週変わっていくもので、変わらない思いはふたつあります。持っているものをすべて出し切る。自分の周りにいる人たちへのリスペクトを忘れない、ということです」

15歳からラグビーを始めた。すぐに頭角を現わしながらもいくつかのスポーツを掛け持ちし、ラグビーに絞ったのは「21歳ぐらい」だった。「それまでの僕は、プロ選手としてラグビーで生活できるとは思わなかった」というスタート地点だからこそ、自身のキャリアを過大評価したりはしない。ポジティブな出来事にもネガティブな体験にも、感覚を鈍らせることなく向き合ってきた。
「ラグビーとは何か」との問いにも、自分なりの答えをすぐに明かす。謙虚で温かみのある人柄が、言葉から立ち上がってくる。
「自分の周りの人に対して、何かを与えられる立場にしてくれるもの、でしょうか。まずは家族に対して、ラグビーという職業を通じて生活の糧を日々与えることができています。それだけでなく、自分は人と関わりながら生きていくことが好きで、それがラグビーの素晴らしいところでもあります。助けを必要としているチームメイトがいればアドバイスをしたり、知識を伝えたりしています。つまりは、ラグビーが周りの人に何かを与えることのできる立場にしてくれているのです。私自身も色々な人から与えられて、施されて、助けられて、ラグビー選手としてここまでやってくることができましたので」

HOとしてのクオリティは、誰もが認めるところだ。藤井アシスタントGM兼採用が「スピードがあり、手先が器用でスキルが高い。スクラムワークの引き出しが多い」と言えば、橋本も「3番っぽい体型なのに、スローがめっちゃうまい。ハンドリングのスキルも、タッチやパスのクオリティも高い」と頷く。
ドゥルーザー自身は、チームに息づくカルチャーを讃える。
「過去に所属したあるチームでは、フッカーは1枠しかないからみんなが他の選手を出し抜こうとしたりして、お互いのことをただの競争相手としか見ていないと感じることがあった。でも、東芝は困ったことがあれば誰にでも聞ける。すごく健全な競争がある」
25-26シーズンは、7節から13節まで勝利から遠ざかった。暗闇をさまようようだったあの苦しみも、チームカルチャーを自覚する時間となった。
「チームとしてやっていることへの信念や信頼が揺らぐことはなく、しっかりエナジーを持って元気にグラウンドへ来て、今週の試合は勝つぞという気持ちをみんなが持ち続けた。自分たちはそういうチームなんだと、確認することができました。確かに苦しかったけれど、意味のある時間だったのでは」
そして、チームの歴史へ思いを馳せる。
「いわゆるレジェンドと呼ばれるようなHOの選手たちが、東芝のジャージを着てプレーしてきたと思います。そのジャージに恥じないプレーしたい。そして、自分がチームを去るときが来たら、フッカーのジャージをより良いものにできているように。そういう思いでプレーしています」
東芝ブレイブルーパス東京の一員としてのプライドと誇りと、歴史の継承者との責任を胸に刻んで。ドゥルーザーは背番号2を、背番号16を背負う。
(文中敬称略)
(ライター・戸塚啓)

いよいよノックアウトステージのプレーオフが始まります。
東芝ブレイブルーパス東京は、5/24(日)14:30より秩父宮ラグビー場にて、リーグ戦3位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイと対戦します。
会場で皆さまの絶大なる応援をお願いいたします!





























































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