【物語りVol.194】リーグワン2025-26 プレーオフトーナメント準々決勝レビュー 持てるすべてを出し尽くした末に



■リーチ主将は「精いっぱいは出せたかな」


今シーズンのベストマッチと言ってもいい戦いを見せました。

NTTジャパンラグビーリーグワン2025-26 プレーオフトーナメント準々決勝が、5月24日に秩父宮ラグビー場で開催されました。レギュラーシーズン3位のS東京ベイに挑みます。

東芝ブレイブルーパス東京のレプリカジャージーやルーパスシャツを着たONE LUPUSのみなさんが、早くからスタンドを埋めていました。クラブは選手たちが着用する白いジャージーと同じ色の『下剋上パネル』を用意し、メンバー外の選手と大野均アンバサダーが気持ちを込めて配りました。

14時30分にキックオフされた試合は、東芝ブレイブルーパス東京のスコアで動きます。22メートルライン付近からのペナルティゴールを、松永拓朗選手が確実に決めました。

東芝ブレイブルーパス東京が3点リードで迎えた15分、S東京ベイにトライを許します。3対7とリードされますが、そのままのスコアで前半を終えます。

後半3分と11分にトライを喫し、3対19と点差を拡げられます。自陣でのプレーが続くなかでプレー強度と集中力を保ち、リザーブの選手もエナジーを注ぎ込みます。しかし、スコアをすることはできず、後半終了間際にトライを喫し、3対26で試合終了となりました。


 

試合後の記者会見に臨んだトッド・ブラックアダーHCは、「負けてしまいましたけれど、自分たちのパフォーマンスは誇りに思っています」と切り出しました。「ピンチの状況に対する反応は、本当に素晴らしいものがありました。ボールを持ったときには、トライを取り切る信念が最終盤まで感じられました」と、チームのパフォーマンスを評価しました。

ラグビーは相対的なスポーツです。自分たちが力を出し切っても、勝利に結びつかないことがあります。トッドHCは言いました。

「今日は僕らの日ではなかった。僕らが勝つ日ではなかった、ということです」





キャプテンのリーチ マイケル選手は、「一発勝負というマインドで、過去のことは考えずにこの試合にすべてを注いで、『東芝スタイルでやろう』というマインドで準備してきました」と話しました。「自分たちのスタイルでやり切ったと思います」と語る表情には、結果を真正面から受け止めている感情が浮かんでいます。

リーチ選手はシーズンを通したサポートに対して、感謝の言葉を口にしました。東芝ブレイブルーパス東京の試合ではお馴染みの応援コールが、この日も試合開始から自然発生的にスタンドに拡がっていました。選手、スタッフとONE LUPUSが一体になり、全員が全力で勝利を目ざしました。

「シーズンを通していい試合もあれば悪い試合もあって、ONE LUPUSのみなさんにひどい試合を見せてしまったことも何回かあり、深く反省しています。たくさんのファンの方々、シーズンを通して支えてくれた方々に本当に感謝しています。最後に結果を出すことはできなかったですけど、自分たちの出せる精いっぱいは出したかなと思っています」



■今日の試合を「新シーズンの基準」に

取材エリアでは、松永選手が記者の質問に答えていました。バイスキャプテンとして臨んだ今シーズンは、2シーズン連続で全試合にスタメン出場しました。

「集大成となるこの試合で東芝のプライドを見せつけないといけない、というので試合の入りは良かったと思います。ディフェンスは終始いい場面はありました」と話します。そのうえで結果については、「S東京ベイが上回ったなあという感じです」と、相手チームを讃えました。

3連覇を目ざした今シーズンは、分厚い包囲網に直面しました。対戦相手はもれなく、東芝ブレイブルーパス東京を事細かに分析してきました。

「それはものすごく感じました」と、松永選手も頷きます。そのなかで積み上げてきたものを、この日はしっかりと表現しました。「いい学びができたシーズンだったと思います」と、前を向きました。



德永祥尭選手は、復帰戦となった13節から7試合連続で先発しました。

「チームとしてしっかり、見せるところは見せられたかなと思います。前半はスコアのとおりで、悪くなかったと思います。そのなかでも、最後取りきるところまでいけなくて、何度か敵陣へ入っているのに取れなくて、そのままカウンターを食らって。後半はほぼほぼ敵陣へ入っていけなかったので」

自身の判断ミスが、相手のトライにつながってしまいました。「チームを苦しめてしまったのは、大きな後悔です」と、自らを責めます。それでも、視線を落とすことはありません。

「チームとしては意地を見せられたかな、と。今日の結果をポジティブにとらえるのなら、来シーズンこれをしっかり基準にして頑張っていかなきゃいけない、ということだと思います」




■モウンガ選手は最後まで観衆を沸かせて

取材エリアで誰よりもたくさんの記者に囲まれたのは、リッチー・モウンガ選手です。東芝ブレイブルーパス東京の一員としてプレーするのは、この日が最後となります。

「全力を尽くしました。勝てるように持てるものをすべて出し切りましたし、チームのみんなも出し切ったと思います。3連覇というのはホントに難しくて、全力を出し切って、勝つことはできなかったけれど、こういう形で終わるのは誇りに思います。それぐらい全力を尽くしました」

前半終了間際のトライセーブの場面で、左眼上を負傷しました。後半は黒いテープを巻いてプレーし、試合後もテープを貼っていました。それでも、後半終了間際にはクリーンブレイクで自陣から敵陣22メートルライン付近までゲインするなど、最後まで観衆を沸かせました。




「何度も言うように、日本でプレーしたこの3年間は最高の経験であり、最高の記憶です。ニュージーランドへ帰ったときはいつも、『日本へ行く機会があったら、絶対に行ったほうがいい』と話していました。生活もリーグも素晴らしいし、ファンは最高です。自分のことをいつも応援してくれて、スタジアムへ来たら自分のホームのように思わせてくれる素晴らしい人たちです。子どものギフトまで用意してくれる、ホントに最高の人たちです」

今夏から母国ニュージーランドへ戻り、オールブラックス入りを目ざします。東芝ブレイブルーパス東京を離れることになりますが、「このチームのファンであることに変わりはありません。ニュージーランドからも応援しますし、ファンの目線で東芝ブレイブルーパス東京の試合を観ることが楽しみです」と、笑顔で話しました。

リーグワン史上初の3連覇は、残念ながら果たせませんでした。それでも、2連覇の残照に浸ることなく、新たな意欲とともに3連覇を目ざしたからこその気づきや学びがあるはずです。それはきっと、東芝ブレイブルーパス東京の未来を切り開くのでしょう。

2026年5月24日から、チームは新たな歩みを進めます。

(文中敬称略)
(ライター・戸塚啓)

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