【物語りVol.198】リーグワン覇権奪回、そして世界で勝てるチームへ!!




■「世界へのチャレンジ」を念頭に体制を変更

7月23日、東芝ブレイブルーパス東京は定例記者会見を実施しました。

はじめに薫田真広代表取締役社長兼GMから、新シーズンの体制についての説明がありました。「世界へどうチャレンジしていくのか」を念頭に、経営層がチーム強化に直接かかわっていく、との報告がありました。薫田社長兼GM、星野明宏副社長、田中正之取締役が中心となり、「判断のスピード」を上げていきます。

チームにも変化がありました。トッド・ブラックアダーHCの退任が発表されたのです。

「昨シーズン6位に終わった要因がどこにあるのかを振り返ったときに、このチームが持続可能な強化をはかり、継続して組織を運営していくためには、変化が必要だという結論に至っています。トッドからも、自分が代わることがベストではないかという申し出がありました」

ブラックアダー氏は19年夏にHCに就任し、リーグワン初年度の22年にプレーオフ進出を果たしました。23-24シーズンは、14シーズンぶりの優勝へと導きました。翌24-25シーズンも、国内の頂点に立ちました。

薫田社長兼GMは、「我々が低迷した時期にベースアップをしてもらい、リーグワン連覇へ導いてくれた。ヘッドコーチとしての手腕は高く評価している」と、感謝の気持ちを表わしました。同時に、「インターナショナルな経験や人柄も評価している」とし、「チームが発展を続けていくために」今後も関係を維持していく方向で議論を重ねてきました。

その結果、ハイパフォーマンスディレクター兼アドバイザーの肩書で、強化戦略や組織基盤の構築、クラブの持続的な成長に寄与してもらうことになりました。ブラックアダー氏は母国ニュージーランドにベースを置き、世界のトレンドを追跡しながら「クラブ全体の発展に対して、これまでの経験を注いでいきたい」と、新たな仕事に胸を躍らせています。





■シムズHCのもとで、3人の外国人スタッフが新たに着任

後任のHCには、ジョシュア・シムズFWコーチが就任します。その経緯と選考理由について、薫田社長兼GMから説明がありました。

「トッドから辞任の申し出があり、外から新しいHCを招へいすることも議論しました。ただ、ジョシュ(シムズHC)は高校の教員をやっていたことがあり、選手たちとしっかりと向き合うことができる。FWコーチとして選手たちと正面から、真摯に向き合ってきてくれたことが、彼を選んだ一番の要因です」

ここで、シムズHCが登壇しました。冷静で力強い所信表明が聞かれました。

「東芝ブレイブルーパス東京というクラブのHCという立場に、これまで経験したことのない大きな責任を感じています。当然のようにハードワークしますし、チームのための献身、クラブのための献身を怠らずに、素晴らしいパフォーマンスが出せる組織を作っていきたい」

ONE LUPUSへのメッセージも発信します。

「日本だけでなく世界でも有数の素晴らしい声援を、一貫して送っていただいていると感じています。その声援に応えられるように、グラウンド上でのエフォート、頑張る姿を見せていく。みなさんの愛、支援、サポートを反映したパフォーマンスを、見せられるように頑張っていきます」





コーチングスタッフには、3人の外国人スタッフが新たに加わりました。

ひとり目はニック・コリンズ氏です。ヘッドS&Cコーチに着任しました。ニュージーランド出身の彼は、三洋電機(埼玉WK)、三菱重工(相模原DB)、豊田自動織機(S愛知)でプレーしました。

シムズHCが期待を口にします。

「選手たちがより強く、より高いパフォーマンスを発揮できるフィジカルの状態へ持っていけるように。リーグワンのレベルは年々上がっていますので、そこにしっかりとついていって、リードできるチームとなれるように、彼を獲得しました」

ふたり目はブリン・エバンス氏です。ヘッドFWコーチの職に就きます。

ニューシーランド代表キャップを持つ彼は、スーパーラグビーやプレミアシップのクラブなどで活躍しました。シムズHCがニュージーランドNPCのホークスベイでコーチをしていた当時、キャリアの終盤を迎えたエバンス氏が選手として在籍し、同クラブで引退後はシムズHCのもとでラインアウトコーチを務めました。

「昨年はスコット・ロバートソン(前監督)が指揮するオールブラックスで、ラインアウトコーチとして活躍していました。また、昨シーズンはハリケーンズで、ワーナー・ディアンズと素晴らしい関係を築きました。東芝ブレイブルーパス東京ではラインアウトにとどまらず、モールやFWプレー全般を統括してもらいます。」

3人目はニック・エバンス氏です。ATコーチを担います。シムズHCが、個人的に親交のあるグラハム・ヘンリー氏から聞いたというトピックを紹介しました。

「彼がオールブラックスの監督だった当時、奥様から『ニック・エバンスだけは絶対に選びなさい、彼は本当にいい子なんだから』と言われていたそうです」

そのヘンリー氏の指揮下で、エバンス氏は07年のラグビーW杯に出場しました。また、イングランドのハーレクインズで長くプレーし、最多得点者としてクラブの歴史に名を刻んでいます。引退後はハーレクインズとイングランド代表で、アタックコーチを務めてきました。

「選手としての経歴はもちろん、コーチング能力も申し分のない人材です。アタックの分野で森田(佳寿コーチングコーディネーター/ATストライクコーチ)さんと協力しながら、アタックをより一層引き上げてくれると思います」

シムズHCはこう語ると、「改めて感じたことですが」と言って表情を引き締めました。

「これだけ才能のあるコーチ陣に押し上げられながら、自分も彼らに負けないパフォーマンスを出していかなければいけないと、身が引き締まる思いです。彼らの力を最大化できるようにまとめ上げていくのが、ここからの自分の使命です」





■キャプテンは4シーズン連続でリーチ選手

3人の外国人スタッフに加えて、新任の日本人スタッフもいます。藤井淳アシスタントGM兼採用に代わって、森井康浩氏がアシスタントGMに就任しました。

薫田社長兼GMが、その起用の理由を明かします。

「彼は摂南大学からフランカーとして東芝に入りまして、チームのバイスキャプテンを務め、コーチもやりました。その後は社業に専念して評価されてきました。ラグビーのキャリアと仕事のキャリアを、チームに還元してもらいます」

また、高橋沙麻里アドミニストレーター兼通訳がスタッフ入りしています。前職はGR東葛の通訳・生活サポートですが、カルロス・ゴーン氏の通訳という経歴もあります。薫田社長兼GMは、「マネジメント側の通訳として、力を発揮してもらいます」と話します。

役職変更のスタッフもいます。水間良武アシスタントFWコーチが、スクラムコーチとなりました。シムズHCは、大きな期待を寄せています。

「コーチとしてものすごく経験豊富な水間さんを、スクラムコーチに任命できる。スクラムは昨シーズンからより一層の改善をはかるエリアで、スクラムにおいてリーグワンをリードできるチームとなるために、大きなフォーカスを置いている表われでもあります」

さらには、藤田貴大アシスタントコーチが、DFコンタクトコーチへ役職変更となりました。23-24シーズンからスタッフ入りしている藤田コーチが、新たな立場でチームのレベルアップに力を注いでいきます。

新シーズンのキャプテンについては、「当たり前すぎて(伝えるのを)忘れていました」と、シムズHCは笑みをこぼします。リーチ マイケル選手が、4シーズン連続で務めます。

「東芝ブレイブルーパス東京にとっても、日本のラグビー界にとっても、稀有な存在だと思っています。そのような選手と協力しながらチームを率いていくのは、とても光栄なことです」





■新加入の外国人選手は「互いを高め合う」存在に

今回の定例会見に先駆けて、7月1日にカテゴリーCの新加入選手が発表されました。FLジャック・デンプシー選手、CTBデイヴィッド・ハヴィリ選手、FBアフェレレ・ファッシ選手です。

デンプシー選手はオーストラリア出身の31歳です。19年のラグビーW杯に出場しました。21年からスコットランドのグラスゴー・ウォリアーズでプレーし、23年のラグビーW杯ではスコットランド代表に名を連ねました。

ハヴィリ選手はニュージーランド出身の31歳で、クラブレベルではクルセイダーズで多くの実績を残しました。23年のラグビーW杯に出場しています。

ファッシ選手は南アフリカ生まれの28歳で、クラブレベルではシャークスでプレーしてきました。21年に南アフリカ代表に初選出され、直近もテストマッチ出場を重ねています。

東芝ブレイブルーパス東京では、外国人選手の加入にあたって「レガシーを残してほしい」との意向を持っています。デンプシー選手とハヴィリ選手は現状で2年契約となっており、薫田社長兼GMは「彼らはリーダーシップを備えており、3年契約だったリッチー・モウンガやシャノン・フリゼルと同じように、レガシーを残してくれることを期待している」と語りました。

ファッシ選手は1年契約です。東芝ブレイブルーパス東京では例外的なものですが、薫田社長兼GMは「外側の決定力が足りなかった反省を踏まえたもの」と説明しました。

シムズHCからは「ワールドクラスのプレーヤー、それぞれのポジションで世界をリードするような3人」とのコメントがありました。「彼らがワールドクラスであるのはもちろんですが、既存のスコッドと照らし合わせたときに、互いにうまく補完して高め合う存在になってくれるはず」との期待も寄せます。デンプシー選手はスコットランド代表、ファッシ選手は南アフリカ代表として、ネーションズチャンピオンシップなどのテストマッチに出場しています。このため、チームへの本格的な合流は11月以降になることが濃厚です。

さらにふたりの新加入選手が、この日発表されました。PRジョセフ・ギャビガン選手、CTB/WTBジョナ・ロウ選手です。

ジョセフ選手はニュージーランド出身の24歳です。ニュージーランド学生代表の経歴を持ち、スーパーラグビーではチーフスとハリケーンズに関わり、直近のシーズンはハリケーンズでディアンズ選手と交流を持ちました。

彼がもたらしてくれるものについて、シムズHCがこう話します。

「1番、2番、3番のポジションをカバーできます。昨シーズンはスクラムが課題だったのは明白ですので、試合はもちろん毎週の練習において、出場するメンバー、しないメンバーと合わせて、追い込んでくれる存在になってくれることでしょう」

ジョナ・ロウ選手はニュージーランド出身の30歳で、マオリ・オールブラックスに選出された経歴を持ちます。シムズHCは「10代のころから指導している」とのことです。「センターを中心にウイング、フルバックもできる」というユーティリティさが、チームの戦術と戦略に柔軟性をもたらしてくれることでしょう。

カテゴリーCの3選手は、国際舞台で確かな実績を残しています。新たなに発表された2選手も、チームの底上げを促してくれることでしょう。昨シーズンの戦いぶりを踏まえた的確なチーム編成が進んでいますが、薫田社長兼GMは「まだまだ」と言います。

「スクラムに強い東芝ブレイブルーパス東京をもう一度謳うために、普段の練習環境を変えるために、外国人のプロップをもっと足していきたい。ここまで外国人選手の新加入発表は5名ですが、本当に勝てる、まず国内で優勝できる、世界のトップと互角に戦う、もしくは勝てるようなチームを、目ざしていきたい」

そういって薫田社長兼GMは、「新たな選手契約が決まりましたら、随時発表していきたい」と語気を強めました。「覇権奪回と世界で勝てるチームをもう1回作っていく」とのゆるぎない意志が、新シーズンのチーム編成にこめられています。



(文中敬称略)
(ライター・戸塚啓)


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