【物語りVol.104】FB マイケル・コリンズ

 チャレンジの連続と表現してもいい人生を、マイケル・コリンズは過ごしている。
 ニュージーランドのクイーンズタウンに生まれ、クラブチームでコーチをしていた父の影響でラグビーに出会った。楕円級に初めて触れたのは4歳だったか、5歳だったか。とにかく、幼少期からラグビーが身近にあった。
 ニュージーランドはラグビー大国として知られるが、クリケットの人気も高い。コリンズはふたつの競技に取り組み、そのどちらでも才能を発揮していた。
「クリケットで年代別の代表に選ばれ、ラグビーでは17歳のときに大きな出来事がありました。ニュージーランドの南島の選抜チームに選ばれ、オークランド、ワイカト、ウェリントンの選抜との対抗戦に出場しました。そこからニュージーランドの高校代表が選抜され、南島から自分ひとりが選ばれました。自分はラグビーで生きていけるかもしれないと、そのときに感じました」
 オタゴボーイズ高校からオタゴ大学へ進学し、コリンズはオタゴの一員としてナショナル・プロヴィンシャル・チャンピオンシップ(ニュージーランド州代表選手権)でスキルを磨いていく。NPCと略されるこのカテゴリーで活躍した選手には、スーパーラグビーへの道が開ける。
 センターやフルバックでプレーし、U20オールブラックス代表に選ばれているから、潜在能力は高かったのだろう。しかし、スーパーラグビーのクラブからは声がかからない。コリンズは鬱屈とした日々を過ごしていた。
 そんなときだった。世界最高峰のラグビーイベントが、コリンズのキャリアを好転させるのである。
「2015年にラグビーワールドカップが開催されたあとに、ウェールズのスカーレッツというクラブから短期のオファーが届いたのです。ワールドカップに出場したウェールズ代表選手がケガをしてしまい、複数のポジションができる私に声がかかったということでした」
 母国とは異なるラグビースタイルへ飛び込み、伸び盛りの22歳はブレイクスルーのタイミングを迎える。7か月の“武者修行”を終えると、はっきりとした成長を自覚することができた。
「ニュージーランドへ戻ると、自分のラグビーがレベルアップしていると感じることができました。フルタイムのプロとして練習をして試合をしたことが、成長につながったのだと思います」

 ユーティリティバックスとしてスカーレッツで経験を積んだコリンズは、古巣のオタゴへ復帰したのちにスーパーラグビーのブルーズと契約を結ぶ。目ざしていた舞台に、ついに辿り着いた。
「ニュージーランドでラグビーをしている子どもたちが、まず目ざすのはスーパーラグビーです。レベルの高い選手が集まり、高いレベルの試合が行なわれているリーグですから、私自身もずっとプレーしたいと思っていました」
 日本のサンウルブズがスーパーラグビーに参戦していた当時、コリンズはブルーズのメンバーとして来日している。17年7月に秩父宮ラグビー場で行なわれた一戦だ。東芝ブレイブルーパス東京からも三上正貴と德永祥尭がメンバー入りした試合は、21対48でサンウルブズが勝利している。
「スクラムになると日本のファンが、狼の遠吠えで応援していたことを覚えています。日本のラグビーは面白いなあ、と感じました」
 19年からハイランダーズで2シーズンプレーすると、21年に再びウェールズへ渡る。オスプレイズからのオファーを受けたのだった。アラン・ウィン・ジョーンズをはじめとしてウェールズ代表を数多く抱えるチームで、コリンズは確かな存在感を発揮した。
 東芝ブレイブルーパス東京への加入を決めたのも、自身の生きかたに沿ったものだ。きっぱりとした口調で、「新しいチャレンジです」と言う。
「新しいチームで、新しいスタイルで、ラグビーをやってみたいと考えました。日本のラグビーがとてもエキサイティングなのは、東芝ブレイブルーパス東京と契約を結ぶ以前から分かっていました。面白いラグビーをしているし、自分にすごくフィットするんじゃないかと感じていました」
 東芝ブレイブルーパス東京に合流して見ると、自身の思いは確信となる。コリンズの言葉が、熱を帯びていった。
「チームには問題なく溶け込めましたし、リーグワンはものすごく面白いですね。海外でももっと高く評価されるべきだと感じていて、有名な外国人選手がいるのはもちろんですが、日本人のなかにもすごく質の高い選手がたくさんいます。海外から見た日本のラグビーは相対的に速い、クイックだと言われていて、それはもちろんですけれど、フィジカルの強度も非常に高い。タフにプレーしていると感じます」

 新しい環境へ飛び込み、順応していく過程では、苦悩や葛藤もある。精神的な痛みを負うこともある。そうした逆境を、コリンズはしなやかに乗り越えてきた。チャレンジを楽しんできたのだ。
「ラグビーのシーズンはスケジュール的に忙しく、練習の強度も高い。ずっとやり続けているともちろん疲れが出てくるので、オフの日は家に籠もるのではなく、トレーニングをするのでもなく、ちょっと出かけてみるようにしています。日本には知らないところがたくさんあるので、観光に行ったりとか、日本語を学んだりしたいと思っていますよ」
 これまで在籍したクラブで、コリンズはタイトルを獲得したことがない。東芝ブレイブルーパス東京の歴史にトロフィーを加えるとの意欲が、闘争心と献身性、それに忠誠心を逞しくする。
「チームの成功こそが私の願いです。そのために自分ができることを、すべて出し尽くしたい」
ダンディなルックスの奥には、義侠にも似た「志」が秘められている。

(文中敬称略)
(ライター:戸塚啓)


【連載企画】東芝ブレイブルーパス東京 「物語り」
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【試合情報】
4/14(日)はホストゲームとして、秩父宮ラグビー場にてコベルコ神戸スティーラーズと対決します!
この試合に勝利することで、プレーオフトーナメント出場が確定しますので、ぜひ会場で皆様のご声援をよろしくお願いいたします!

4/14(日) vs コベルコ神戸スティーラーズ チケット情報
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