【物語りVol.114】 「ポジティブな信念と自信」を胸に

■ファンクラブ会員は前年比大幅増で推移

9月26日、東芝ブレイブルーパス東京は定例記者会見を開きました。今回は荒岡義和代表取締役社長、薫田真広GM、トッド・ブラックアダーHCが出席しました。

 最初に荒岡社長が登壇します。3つの話がありました。

 ひとつ目は、2023-24シーズンプレーオフ期間の広告費換算です。プレーオフ準決勝1週間前の5月13日から、決勝戦1週間後の6月2日までの期間に、新聞、雑誌、ウェブサイト、テレビ、ラジオなどで、東芝ブレイブルーパス東京がどれぐらい取り上げられたのかが調べられました。結果は47億8千万円でした。そのうち31億円を、テレビが占めます。荒岡社長は「びっくりするくらいあるのだな、と感じた次第です」と、率直な思いを明かしました。「事業会社として営業をしていくにあたって、我々にはプロスポーツのビジネスとしてこれぐらいの価値がありますと、説明できるものがほしいと考えていました。今後はレギュラーシーズンについても、ある一定期間で調査することを考えています」
 ふたつ目は、2024-25シーズンファンクラブについてです。昨シーズン好評だったスーパープレミアム会員は、30名から60名へ募集人数を増やしましたが、「募集開始から1分」(荒岡社長) で定員に達しました。また、昨シーズンは定員に達しなかった300名限定のプレミアム会員も、「あっという間に」(荒岡社長)受付終了となりました。現時点でファンクラブ会員は、対前年比で1・9倍増となっています。荒岡社長「優勝の効果では」と見ています。
 三つめは北海道でのホストゲーム開催です。来年3月30日の三重ホンダヒート戦が、大和ハウスプレミストドーム(札幌ドーム)を舞台に繰り広げられます。荒岡社長がその経緯を説明します。
 「リーグワンのチームが首都圏に偏っているなかで、キヤノンさんの大分でのホストゲームへ行ったときに、地元の子どもたちが喜んでいる姿を見ました。我々もゆかりのある地域でホストゲームを開催したいと考え、リーチ マイケル選手が育った北海道になりました。リーチ選手はあちらで根強い人気があり、北海道の方々から熱烈に(開催へ向けた)お話をいただきました」
北海道に限らず、その他の地域での開催も視野に入れています。キャンプ地の鹿児島なども「興味を持っていただいている」とのことです。
 選手たちにより良い舞台を提供するために。たくさんの方にスタジアムへ足を運んでもらい、笑顔で帰途に着いてもらうために。選手たちと同じようにクラブの事業スタッフも、新シーズンへ向けて準備を重ねています。

 

 

■東芝の「文化」を大切にしながら

続いて、薫田GMとトッドHCが登壇します。

最初に、薫田GMがマイクを握りました。

 「14 年ぶりにチャンピオンチームとしてシーズンを迎えられたことを、非常に嬉しく思っています。今シーズンはレギュレーションの変更があり、チーム間の大きな移籍もありました。そういう意味で各チームの力が想定できない、まだ予測がつかない。そのチャレンジに対しても、非常にワクワクしています」
 2024-25シーズン新加入選手として、HO酒木凛平選手、CTB池永玄太郎選手、WTB/FB金秀隆選手がチームに合流しています(8月1日に公式サイト上で発表済み)。新たな外国人の獲得については、「いまのところ考えていません」と薫田GMは話します。
 「東芝が大事にしてきた育てる文化のもと、進化と変化を遂げてともに成長していく。この3人を含めて、移籍した選手の穴をしっかり埋めてくれる編成になった」と続けました。
 「HOにはジャパンでも活躍した原田、橋本がいますけれど、酒木が3番目に食い込んでいくという。彼がどれだけ頑張れるかに注目していただきたいです。CTBはマクカランと中尾が抜けましたので、経験とサイズのある池永に期待しています」
WTBとFBでプレーする金選手は、選手起用の幅を拡げる存在となるでしょう。薫田GMが説明します。
「FBでは松永がほとんどフル出場して、スタッツにおいても2シーズン連続で一番です。非常に成長していてタフな選手です。金の加入によって、より幅広いバックスリーが作れるでしょう」
スタッフではジョシュア・シムズFWコーチ、ユアン・マッキントッシュBKコーチが新任となります。
 「ジョシュアはイタリアのゼブレでアシスタントコーチをやっていました。元々教職者ということもあり非常にタフで、おそらく東芝らしく無骨にやる。タイトにタフに、さらにFWのチームを作ってくれるのでは。昨シーズンはスクラムからの失点が多かったので、スクラムをしっかりコントロールすることも重要なミッションです」
ユアンBKコーチは、指導者としては若い38歳です。
 「彼はプレミアシップやトップ14で指導経験があり、フランス代表のキッキングコーチ、東京五輪で中国女子セブンスのヘッドコーチもやっています。パリ五輪ではオールブラックスセブンスのアシスタントコーチをやっていました。キックを中心としたスキルを、しっかりチームに落とし込んでほしいですね」
新任のスタッフでは、2014年から2シーズン在籍した川端昭彦氏が、ヘッドS&Cコーチとして戻ってきました。薫田GMは「レベルアップして帰ってきてくれました」と笑みをこぼし、「接点でしっかり打ち勝つタフなチームを作っていきたい」と、その起用理由を説明しました。また、藤井淳採用担当が役職変更となり、アシスタントGMを兼任することとなりました。高木貴裕チームディレクターを含めた3人で、リクルートの新たな体制を構築していきます。薫田GMは「お金を積んで外から取ってくるのではなく、しっかり力を合わせて選手を獲得していくことが非常に重要」と説明しました。今シーズンはトッドHCの就任6シーズン目、トッドHCと森田佳寿コーチングコーディネーターのコンビは3シーズン目となります。薫田GMは「ワールドカップ再招致へ向けて、日本人スタッフの育成も我々の使命」と語り、「トッドと森田の体制でどれだけ新たなものをチームに落とし込めるか。そのマネジメントに非常に期待しています」と言葉に力を込めました。

■「色々なチャンスが眠っている」

 薫田GMからマイクを譲り受けたトッドHCからは、2024-25シーズンのキャプテンが発表されました。
 「昨シーズンに続いて、リーチ マイケルです。最初はまた断わられるかなと思ったのですが(笑)、もっとやりたい、もっと良くできる部分が自分なりに見つかったと。彼がそう言ってくれたのは、隣にいる薫田GMも含めてチームのマネジメント全員がすごく嬉しく思っています」
続いて、バイスキャプテンの発表です。こちらも昨シーズンと同じく、原田衛選手が指名されました。また、プレシーズンのキャプテンというポストに、松永拓朗選手が任命されています。
 「拓朗はまだ若いですが、チームのなかでしっかりプレゼンスがある素晴らしいリーダーです。リッチー(・モウンガ)ともいい関係を築けています。我々のグループをしっかり引っ張っていってほしい、との思いで任命しています。将来的にキャプテンになれる器の選手です」
新シーズンへの思いも明かしました。穏やかな表情で語ります。
 「新しく加入した選手やスタッフには、彼ららしく自分を表現してほしい。新しいアイデアを持ち込んでほしいのですが、僕らにはチームとしての確固たるDNAがあるので、自分が持っているどの要素を還元できるのかを、考えやすいのかな、と」
リーグ戦に触れると、口調が熱を帯びていきます。
 「大会のフォーマットが変わって2試合増え、バイウィークが減って連戦のブロックが増える。スケジュールを見るだけで、タフなものになると予測してします。そのなかにも、色々なチャンスが眠っていると感じます。若くてハードワークできる僕らのようなチームには、ものすごくいいチャンスだと受け止めています」チームへの思いも語ります。「より良く、もっと良く」と英語で説明し、「カイゼン(改善)」という日本語を使いました。
 「もっといいラグビーをお見せしたい。優勝した昨シーズンでさえも、いま見返すと色々なところに成長の種が落ちていました。シーズンへ向かって、毎日毎日、毎週毎週、新たな課題が見つかり、新たな学びがある。 全員一丸となって学んで、より良くなっていくことを繰り返していく。その作業についても、ものすごく楽しみな気持ちを持っています」
成長の種を具体的に挙げると? トッドHCは間を置かずに答えます。
 「FWならスクラム、ラインアウトはより良くしていくべき部分。ディフェンスももっと良くできます。アタックももっともっと改善の余地はあります。まだまだ開幕までは時間があるかもしれませんが、もうすでにこの段階からワクワクが止まりません」
チャンピオンチームとして臨むシーズンに、プレッシャーはないのでしょうか。トッドHCは迷いなく答えます。チームを包んでいるメンタリティを讃えます。
 「優勝できたことはすごく嬉しく思っていますし、その喜びをいまも感じることはありますけれど、 それよりももっともっと歩みを進めている実感があります。優勝したことによって自信や多少の余裕が生まれ、自分はこういうプレーをしていいのだというポジティブな信念や自信を得てくれたのかな、と。プレシーズンが始まってから、タイトルを防衛するシーズンとか現王者といった言葉は、選手もスタッフも誰ひとり使っていません。練習で課せられる一つひとつのドリルを、日々全力でやっている。それに尽きます」
高みを見たからこそ、これまで以上にタフにハードワークする。自分を追い込む。互いに鼓舞する。チーム全体がスタンダードを上げていく。油断も、慢心も、てらいも、驕りもなく、東芝ブレイブルーパス東京はひたむきに毎日を過ごしています。

【連載企画】東芝ブレイブルーパス東京 「物語り」
・物語り一覧はこちら

関連リンク

LINK

パートナー

PARTNER

このページのトップへ