■ファン層の拡大に注力

 10月31日、東芝ブレイブルーパス東京は定例記者会見を開きました。最初に荒岡義和代表取締役社長が、事業面について説明をしていきます。
23-24シーズンの売上高は、6億2400万円でした。これを受けて24-25シーズンは、7億円以上を目標に掲げました。母体企業からの拠出金を除いて、事業で7億円以上を売り上げたいとのことです。
「昨シーズンはワールドカップの流れがありましたが、今シーズンは特別なイベントがありません。ラグビーの事業面での実力が試されるシーズンと考えております」
具体的には、母体企業を除くスポンサー収入を3億5000万円に設定しています。昨シーズンは2億8400万円でしたから、20パーセント以上の増額を目指します。
「これについては昨シーズン優勝したこともあり、賛同していただける企業さま、増額していただける企業さまが増えています。現段階ですでに、3億3000万円ぐらいまでは目途が立っています」
 チケット収入につながるホストゲームの入場者数は、1試合平均の有料観客数の目標を8000人としました。昨シーズンは有料、招待を合わせた1試合平均入場者数が10045人でした。そのうち有料は、70パーセントを超える7200人以上となっています。プラス800人の積み上げのために、はかねて課題にあげてきた「ファン層の拡大」をより一層加速させていきたい考えです。荒岡社長はこう話します。
「若年層や女性層など開拓の余地があるところを、重点的に拡げていきたい。それに伴って、序盤のホストゲームでは昨シーズン同様に招待客を増やし、後半の安定的な集客につなげることも検討していきます」
 有料入場者数を8000人とするためには、1万人から1万2000人の集客がノルマとなります。荒岡社長は「ハードルは高いですが、それぐらい上げていかないとトライする価値はない。前述したように特別なイベントがないことを加味して、危機感を持ちながら8000人という目標を何とか達成したい」と決意を込めて語りました。
ファンクラブ収入は、昨シーズンの3800万円から4500万円への増額を目ざします。グッズ収入は6月の定例記者会見で5200万円との報告がありましたが、その後も優勝グッズが売れ行き好調で、およそ6000万円まで膨らみました。
「今シーズンはチャンピオンチームということを全面的に押し出して、グッズ収入は8000万円を目標にしていきます」
 今シーズンはビジターゲームからスタートします。クラブは「ファンの方々との一体感を高める」ことを念頭に、レプリカジャージを枚数限定で販売しました。
「これが即完売となりました。サプライヤーさんなどに対応していただけるかどうかというのはありますが、再販売したいと思っています。日産スタジアムでの開幕戦には、ぜひレプリカジャージを着て観戦に来ていただければと思います」
 事業規模を拡大していくために、クラブは様々なアイデアや施策を実行へ移しています。11月の定例記者会見でも、さらに具体的な話が聞けることでしょう。

■ルーパスカップが映し出す「ノーサイドの精神」

 続いて、10月26日に行われたルーパスカップに関する報告がありました。同日開催の三菱重工相模原ダイナボアーズとのプレシーズンマッチに先駆けて、府中グラウンドに子どもたちの元気な声が響きわたりました。報告は事業運営部の松田努氏です。黄金期の一員である松田氏は、今年7月にチームへ“復帰”しました。
「今回は園児から小学4年生まで、7つのクラブから約200人の子どもたちが集まってくれました」
 ルーパスカップには独自のルールがあります。ラグビー5大憲章をもとにしたもので、そのなかから松田氏は「自分が一番大事にしたいもの」として、「コーチ・親は子どものプレーを怒らずにほめる(尊重)」に触れました。
「ジュニアラグビーや女子ラグビーを見ているなかで、うまくできない子どもに怒った口調で接する場面を見ることがあります。うまくなってほしい、勝ってほしいからなのでしょうが、自分なりに気になっていまして。日本で1番仲間をほめる大会にしたい、という思いがあります」
 さらには「毎試合後に対戦相手と5分間の感想戦を行なう」という独自ルールにも触れます。こちらはラグビー憲章の「品位」につながるものです。
「僕も実際にその様子を見ましたが、 『あのプレーは本当にすごかった』という感じで、率直な意見がどんどん交わされていました。ファシリテーターはコーチの方々にやってもらいましたが、子どもたちがコーチの顔ではなく、子どもたち同士の顔を見て話し合っていました。勝者も敗者もなく共同作業を行なうのはノーサイドの精神に通じるところがあり、とても良いと思いました」
 府中グラウンドでは11月30日、12月7日にもプレシーズンマッチが組まれています。松田氏は「その2試合で次は小学5、6年生、その次は中学生と、今後もルーパスカップを実施して、ジュニア世代のすべての子どもたちに参加してもらえるようにしていきたいです」と、今後の展望を語りました。
 「紳士・淑女の種を育てる大会」をキャッチフレーズとするルーパスカップを通して、東芝ブレイブルーパス東京は子どもたちの健やかな成長に寄与していきます。

 

■移籍加入の3選手は「優勝に貢献したい」

 この日3つ目のブロックでは、8月に加入が発表された池永玄太郎選手、金秀隆選手、酒木凛平選手が登壇しました。3選手は26日のプレシーズンマッチに出場しました。12番を着けて出場した池永選手は「個人的に久しぶりの試合だったので、楽しかったのとしんどかったというのが、正直なところでした」と振り返りました。さらに、「東芝に来て初めての試合だったので、コーチ陣やスタッフの方々、ファンのみなさん、それからチームメイトに自分を知ってもらう良い機会でした。 プレーはまだまだ改善できるところがありましたが、自分を表現するという課題についてはうまくできたかなと思いました」と語りました。
 自分を表現するというのは、チーム全体のテーマでした。15番で出場した金選手も「そこは表現できたかなと思います」とし、「初めての試合でまだまだミスもあったので、チームにしっかりコミットしていきたい」と続けました。リザーブからの出場となった酒木選手も「ミスはたくさんあったので、改善するところはたくさんあります」と反省の弁を述べました。そのうえで、「東芝ブレイブルーパスの一員になれたことがすごく嬉しくて、チームメイトをはじめとして色々な方から『おめでとう』と言ってもらえて、それもまたすごく嬉しかったです」と笑顔を浮かべました。
 これまでは対戦相手として、東芝ブレイブルーパス東京を見てきました。チームの一員となったいまは、どのような印象を抱いているのでしょう。池永選手は「外から見ていたものと、入ってみての印象にギャップはないです」と切り出します。「熱いチームだと思っていましたし、スタンダードが高いのも思っていたとおりです。自分自身に良いプレッシャーをかけられる環境です」と、表情に充実感をにじませます。
 金選手も「思っていたとおり」と頷きます。
「アタッキングラグビーで、空いているスペースに自由に動かして、ホントに楽しいなと客観的に感じていました。実際にチームに入ってみて、やはり楽しいと感じます」
 酒木選手は「東芝らしさ」の根幹に触れます。
「やはりフィジカルがすごく強いチームで、コンタクト、接点にこだわっていると感じます。その高いスタンダードに、自分も合わせていかないといけないと思います」
 チームの雰囲気についても、東芝ならではの「カラー」をあげました。
「ファミリー感がありますね。みんな仲が良くて、指摘し合えるし、良い刺激を与え合える環境です。先輩方が色々な人に対して、プラスになるように動いてくれています。そうやってくれるから、年齢が若い選手も伸び伸びとやることができていると思います」
 金選手も「雰囲気はめちゃめちゃ良いですね」と声を弾ませます。
「何か分からないことがあれば、先輩、後輩は関係なしに聞けますし、コーチ陣もそうですし。やっぱり強いチームは、ファミリー感があるんだと感じます」
 大阪府出身の池永選手は、「同じ関西出身の松延さんが、いつもお世話をしてくれます」と言って会見場の空気を和ませます。そのうえで、チームにスムーズに溶け込むことができた理由を明かしました。
「自分から積極的に発信していこうと思っていましたが、コーチングコーディネーターの森田(佳寿)さんもトディ(トッド・ブラックアダーHC)も、選手も、話しかけてくれることが多くて。すんなり馴染めるように、すごく助けてもらいました」

 今シーズンの目標について聞かれると、3人は「優勝に貢献したい」と口を揃えました。お互いを高め合う東芝のカルチャーのなかで個々がレベルアップをはかり、チーム全体の力を押し上げていきます。

 

【連載企画】東芝ブレイブルーパス東京 「物語り」
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