【物語りVol.179】通訳 シンクル 蓮

25年4月1日に発表されたそのニュースは、ラグビー界に驚きをもたらしたはずである。
24-25シーズンの東芝ブレイブルーパス東京の新加入“スタッフ”として、シンクル蓮が加入したのだ。流通経済大学でキャプテンを務めていた巨漢ロックが、選手ではなく通訳としてチームの一員となったことに、「なぜ?」と思った人はいたはずである。
「ひざの痛みが続いたというのがまずあって、自分の中では大学の4年間で選手として一区切りついたかな、という感覚がありました。声をかけていただいたチームもあったんですけど、ケガを気にしながら選手生活を続けても、どこまでできるだろうか、と。それならば、将来的に指導者になりたい希望もあるので、東芝ブレイブルーパス東京の通訳をすることでたくさん学べることがある、と決断しました」

7歳からラグビーを始めた。「それから15年間、ずっとラグビーしかやってこなかったと言ってもいいぐらい」の時間を過ごしてきた。
セカンドキャリアへ転換するには、あまりにも若い。やめる決断はいつでもできるが、それは基本的に一度限りである。後戻りはできない。助言というよりも懇願に近い思いに、蓮はあちらこちらで触れた。
「大学のコーチも、相模原でプレーしている兄も、母も、続けてほしいと言ってくれました。大学のチームメイトとか、昔から知っている友だちも、すごくびっくりしていましたね」
誰もが自分のことを思ってくれている。それがとても有難く、だからこそ、自分の決断に責任を持たなければならない。
本当にそれでいいのか。後悔しないか。自分に何度も問いかけて、蓮は通訳としての道を踏み出した。
「英語と日本語のニュアンスの違いとか、伝えかたとか、考える部分がすごく多い。通訳という仕事を通してラグビーを学びたいと思っていましたが、いまはとにかく通訳として学んでいます」
想像していたよりもタフな仕事だった。それがまた、蓮の成長意欲をかきたてる。
「去年はFWのアシスタント通訳と(メンバー外の)K9をメインにやっていたんですけど、今年はウィル(・エグルストンDFコーチ)に付いてディフェンス全体の通訳を担当していまして。ラグビーを理解できていないと、選手たちに説明できません。チームにはそれぞれに共通語があって、たとえばこの飛ばしのパスはブリッジって言うとか、頭のなかですべて東芝の単語に統一しないといけない。まずそこに苦労しました」

東芝ブレイブルーパス東京には、多様な国籍の選手とスタッフが集まっている。同じ英語圏でも、単語が持つ意味が微妙に異なることがある。
「そうですね、ちょっとずつ表現のしかたが違ったりします。そのなかでも選手にしっかり伝えたいので、ミーティングでは事前に内容を教えてもらって、使うべき単語を事前に整理します。たとえば、Brutal(ブルータル)という言葉には、残虐、残酷、容赦ない、といった意味があります。リーダー陣の人たちと話すと、Ruthless(ルースレス)という単語を『容赦なく』と解釈しているので、それだったら違うものがいいということで、いくつか候補を出して。そのなかのどれが伝わりやすいか、気持ちが入るかということを、あらかじめ選手に聞いたりもします」
コミュニケーションの量や深さは、チームのパフォーマンスに、勝敗に直結してくる。責任の重さを実感する日々だ。
「このチームはバイリンガルの選手が多くて、日本語も英語も理解できる選手に『うまくできてるね』と言われると、ホッとするというか、嬉しいですね」
通訳の仕事に没頭しながら、指導者になる夢を追いかけている。慌てずに、少しずつ。
「毎日色々なことに気づかされるので、それをノートに書いています」と話す。小さな微笑みが、充実感を表わしている。

「僕は北海道の札幌山の手高校の出身で、ウチの高校って花園で2回戦を突破したことがないんです。それが悔しくて、母校の力になりたいなって。でも、いつまでに指導者になりたいとかは決めていません。通訳の仕事をしっかりやりながら、ここで学ばせていただきたいと思っています。やっぱりこのチームの環境は、素晴らしいものがありますので」
父がニュージーランド出身で、中学校の3年間は南半球のラグビー大国で過ごした。クルセイダーズで躍動するリッチー・モウンガが、強烈な記憶として脳裏に焼き付けられた。
「リッチーはテレビのなかの人です(笑)。リーチ マイケルさんは高校の先輩で。トディ(トッド・ブラックアダーHC)もそうですけれど、ラグビー選手、ラグビーの指導者としてだけでなく、人間として尊敬できる方がたくさんいます」
一緒にプレーしたことのある選手、対戦したことのある選手も少なくない。「同期の木戸大志郎は、高校生の頃から知っています。以前からつながりのある選手もいるので、ホントに仲良くしてもらっています」と言葉が弾む。東芝ブレイブルーパス東京のカルチャーが眩しくて、その一員であることが嬉しい。
「みんなホントにラグビーのことを、いつも考えている。ちょっとした会話でもラグビーの話が出てきますし。一人ひとりのラグビーと向き合うレベルが違う、と感じます」

プレーのスタンダードも意識も高いそのチームで、自分もラグビーをやってみたい、という衝動に駆られることはないのだろうか。蓮は小さく頷いて、「続けていたらよかったかな、と思う時期もありました」と明かした。素直な心境の吐露には、もう少し続きがある。苦笑いが浮かぶ。
「でも、25-26シーズンの前に若い選手が走っているのも見て、自分はもう同じことはできないなって。いまはできる限り長くこのチームで通訳をして、たくさんのものを吸収したいと思っています」
聞いたことをそのまま訳すのではなく、話し手の意図や感情までを汲み取って、受け手の胸の奥まで染み込むように。通訳としての充実感が、蓮の心を埋めている。
(文中敬称略)
(ライター・戸塚啓)

次戦のホストゲームは、4/25(土)14:30より秩父宮ラグビー場にて、横浜キヤノンイーグルスと対戦します。
プレーオフ進出へ向けて、絶対に負けられない一戦となります。
ONE LUPUSの皆さまのご来場をお待ちしております!!





























































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