【物語りVol.195】2025-26シーズンを薫田社長兼GM、トッドHC、リーチ主将が総括

 

■リーグワン最多の入場者数を記録!!

6月11日、東芝ブレイブルーパス東京は定例記者会見を実施しました。25-26シーズンを事業、競技の両面から振り返るもので、薫田真広代表取締役社長兼GM、トッド・ブラックアダーHC、キャプテンのリーチ マイケル選手が出席しました。

最初に登壇したのは薫田社長兼GMです。売上には素晴らしい数字が並びます。

「開幕節で4万人プロジェクトを掲げて、実数は満たなかったものの(3万2613人)、大きな旗を上げることで良いスタートが切れたのかな」

ディビジョン1でのホストゲーム観客総数が、5シーズン目で初めてリーグ1位となりました。1試合平均では12781人で、前シーズンから2500人強の増加となっています。ホストゲームは、全試合で黒字化を達成しました。

事業売り上げでは、スポンサー(母体企業を除く)、チケット、グッズ、ファンクラブ、アカデミーの合計で、11億970万円となりました。前年比で154%のプラスとなり、10億円を初めて突破しています。

その大きな要因がスポンサーです。前年比210%増の7億5300万円です。企業数は前年比167%増の276社を数えます。

「TBL(東芝ブレイブルーパス東京)全体として、営業がしっかりできた成果。ここが数字を押し上げています」

チケットの売り上げは1億9800万円で、前年比98パーセントとなっています。一方で、1試合平均入場者数は、前述のとおり増えています。その理由が明確です。

「我々の方針として、子どもさんに、子どもさんを含めたファミリーに、スタジアムへ足を運んでいただく、チケットを買っていただくというのがあります。そうなると、チケットの単価を安くする、ファミリー全体でのトータル価格を下げる必要がある。毎試合のチケットの平均単価は、少し下がっています。未来の日本ラグビーの宝である子どもさんたちに、ラグビーにいかに興味を持ってもらうか、スタジアムに足を運んでもらうか。リピートにつなげていくか。そういう方針でやってきました」

グッズの売上は8800万円で、前年比で87%でした。薫田社長によれば「他チームに比べて伸びている」とのことですが、「試合後のグッズの売上げは、負けると下振れします」との説明がありました。来場者の購買意欲は、やはりチーム成績に影響されるところがあるのでしょう。

ファンクラブの売上は、前年比126%増の4400万円です。「根強いファンについてもらっている」と、薫田社長兼GMは感謝を口にしました。

また、アカデミーの売上は前年比124%増の2600万円です。ルーパス塾の生徒数も増えています。現状では「コーチの数や枠の制限がある」ものの、薫田社長兼GMは「今後の伸びしろ」と位置付けています。




GMの立場からも言及がありました。

「3連覇という大きなチャレンジのシーズンでしたが、失ったものは大きいと感じます。GMを5年間やっていますが、これほど時間を費やしたことがないぐらいにレビューをしています。失ったものを取り戻すには、2倍、3倍の努力をしていかなきゃならない。しっかりしたプランのもとで、我々の魂である猛勇浪士、接点無双、コンタクトのところにもう一度立ち戻る。我々の原点を、強みを、メッセージ性をもって高めていきたい」

薫田社長兼GMは、持続可能なクラブ経営として「フランスのトップ14」をひとつの指針としています。具体的には「30億円規模で事業をまわしていく」とし、25-26シーズンは33億、34億円となっています。

「全体の規模には満足ししています。事業、営業のスタッフが良く頑張ってくれましたが、私の立場では事業と強化を両輪で回していくことが非常に重要です」と話します。秩父宮ラグビー場が新たに生まれ変わるにあたり、ホストゲームを開催できない時期を迎えます。そういった事態も踏まえて、「しっかりと数字に反映できるようにしてきたい」と、薫田社長兼GMはクラブのさらなる成長を推し進めていきます。




■「4つの学び」をチーム再構築の土台として

続いて、トッドHCが会見場に着席しました。薫田社長兼GMの事業に関する説明を受けて、「これだけいい数字を出してもらい、素晴らしい会社に支えられていると感じます」と、感謝を言葉にしました。

25-26シーズンを振り返るにあたって、「まずは(プレーオフを制した)神戸さんにおめでとうとお伝えしたいです」と切り出しました。神戸対S東京ベイのプレーオフトーナメントファイナルはチーム全員で観戦し、「またあの舞台へ戻りたいという決意を、改めて深めました」と語りました。

25-26シーズンを語るうえでは、ケガ人の続出に触れなければなりません。トッドHCも頷きます。

「プレシーズンもシーズン開幕後も、継続的にケガ人が多かった。一貫したセレクションから生まれてくるグラウンド上でのつながりを、なかなか作れなかったです」

その裏返しとして、多くの選手が初キャップを獲得しました。

「11人の選手が、東芝ブレイブルーパス東京のジャージを着てデビューを飾った。そこはチームとして素晴らしいシーズンだったといえる一部かなと」

3連覇を目ざした25-26シーズンは、プレッシャーも大きかったと振り返ります。

「過去2シーズンは感じることのなかったプレッシャーを感じた。それが今後に向けて、自分たちの立ち返る力などにつながる。今シーズンの学びは、来シーズンだけでなくこれからの東芝ブレイブルーパス東京を作っていくための基盤に成り得ると思います」

そう言って、「4つの学び」をあげました。

「ひとつ目はセットピースの改善。ふたつ目はボールを含めた空中戦。3つ目はスキルの遂行力。4つ目は一番大事なものとしての規律です。目の前にこの4つを並べてみると、これだけ伸びしろがあるんだと実感します」

3つ目については記者から質問があり、より細かな説明がありました。

「連覇したシーズンは、リーグで一番ボールをキープして攻め続けて、キックの本数は一番少なかった。今年はキックが一番少ないチームではなかった。相手にアタックを分析されたり、読まれたりしているなかで、シーズン途中でキックにより比重を置いたところもありました。これまで機能していて、自分たちを高みへ連れていった要素を、信じ続けるのか。それとも、少し課題は残るけれども突破口になりうるかもしれない新しい戦術を、採用するのか。その難しい判断を、1シーズンを通して強いられました」



シーズン中のトッドHCと選手たちは、コリジョンバトルやフィジカルの重要性を繰り返し指摘していました。トッドHCは「より強固なフィジカルのベースが絶対的に必要です」と話し、「プレシーズンから障害予防も含めて、一貫して鍛えていくことをやっていきたい」としました。

26-27シーズンの新加入選手として、HO原田衛選手、SO中尾隼太選手がチームに加わります。また、SRのハリケーンズへ期限付き移籍中のワーナー・ディアンズ選手も、新シーズンの戦力と見込まれています。

SRのモアナ・パシフィカでプレーしていた原田選手は、すでに帰国しています。薫田社長兼GMは、定例会見当日に「たまたま会った」そうです。

「体重は2キロぐらい増えたと言っていましたが、見た目にはそれ以上に大きくなっていた」と、その変化を明かしました。「原田もワーナーも大きく成長して帰ってきてくれたと思うので、チームにコミットしてもらって、ジャパンでのリーダーシップも含めて発揮してもらいたい」と、期待を込めて語ります。

薫田社長兼GMが話したように、原田選手とディアンズ選手は6月から活動している日本代表に招集されています。日本代表は7月から11月にかけて、8試合を消化します。

トッドHCは、「我々のチームへの本格的な合流は、26-27シーズン開幕の1週間前ぐらいになるのでは」と想定します。「ジャパンのスケジュールを見ていると、リーグワンと同じぐらいの期間がある。各試合の強度も高く、合流したタイミングで彼らの身体とメンタルを精査していくことになる」との見通しを示しました。

中尾選手は17年から24-25シーズンまで在籍していました。トッドHCはその当時について、「メンバーに選ばれなかったときに、対戦相手の仮想10番の役割をすごく高い質でやってくれていた」と評価します。3シーズンぶりの復帰については、「天性の10番で、練習からチームに対して貢献してくれる。10番の一層の厚みを求めているなかでの獲得でもあります」と話します。

カテゴリーCのリッチー・モウンガ選手、シャノン・フリゼル選手、セタ・タマニバル選手が、昨シーズン限りでチームを離れました。トッドHCは「大きな影響力を持ってきた選手の退団が決まっていますが、より強固なスコッドを用意できる準備も進めています」と話します。そのうえで、「より強固になったマインドセットを持って、新シーズンへスタートを切っていきたい。そこには25-26シーズンの学びが、非常に多く詰まっています」と、会見をまとめました。




■「人ありき」ではない「東芝のスタイル」を

リーチ主将も事業面に触れて、「ファンとのコネクションはすごく良くて、リーグワンでのトップの入場者数は、すごく誇りだと思います。それにマッチングするパフォーマンスを、僕らが出せなかったのはすごく悔しいです。残念です」

リーチ主将はかねてから、リーグワンのレベルアップを指摘していました。「それに対して僕らは、少し停滞していた」と反省を口にします。

「何が停滞していたかと言えばハードワークで、土台作りのところでハードさが少し足りなかったと思います。(プレーオフで優勝した)神戸のヘッドアスレティックコーチのフィルに聞くと、インテンシティを一切落とさなかったと。ラグビーの原点はそこなので、来シーズンはそこを徹底してやっていきたい」

25-26シーズンのリーグワンで頂点に立った神戸Sの戦いを通して、見えてきたものもあります。

「神戸Sはシーズンを通して、自分たちの強さを一貫性を持って出して、コリジョンエリアで圧倒していた。スクラムも優位に立っていた。ラグビーの原点にどれだけフォーカスを当ててできるか、というのが大事だと思いました」

メディアとの質疑応答で、カテゴリーCの3人が抜けたことについての質問がありました。リーチ主将は「セタは6年間、チームを支えてくれた。リッチーとシャノンのインパクトはすごく大きかった」と、チームを離れる3人への感謝を口にしました。

「彼らが抜けた穴をどうやってカバーするのかよりも、自分たちのラグビースタイルを見直さないといけない。人ありきじゃなく、しっかりとしたアイデンティティのあるラグビーをする。まずはそこにフォーカスを当てないといけない。誰が入っても活躍できるようにしたい」

改めて、東芝ブレイブルーパス東京の「アイデンティティ」とは。

リーチ主将は迷わず答えます。

「今シーズンの試合を観ていて、東芝イコールこれというものを感じなかった人がたくさんいたんじゃないかと思います。東芝のアイデンティティはハードなブレイクダウン、セットプレーのエリア、コリジョン。そこにもう一回、フォーカスを当ててやっていきたい。そのためには練習しないといけない。シーズン前からシーズンを通して、ハードに練習できるキャパシティをどれだけ増やせるのかがカギになります」

25-26シーズンはケガ人が多かったこともあり、多くの選手が初キャップを獲得しました。「それはいいポイントです」とリーチ主将は首肯し、胸に秘める決意を明かしました。

「今シーズン負けた経験が、かなりいい財産になるのでは。クラブとしてたくさん経験者がいるので、今後こういう結果にならないように、経験を生かしながら来シーズンへ向けて準備していきたいと思います」

いくつかの成果と、少なくない課題を、これから過ごす日々にしっかりと織り込んで。

自分を見つめ、チームを見つめ、高い志と意欲を共有して、グラウンドの内外で基準を上げていく。悔しさを歓喜へ変えるために。ともに戦い、乗り越えていく。

東芝ブレイブルーパス東京は、新たなシーズンへ向けてすでに動き出しています。



(文中敬称略)
(ライター・戸塚啓)

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