【物語りVol.22】HO 橋本 大吾

 良く通る声で、ハキハキと、しっかりと話す。
 チームメイトから「だいご」と呼ばれる28歳は快活だ。
 将来性豊かなフッカーとして16年度に新加入した橋本だが、意外なことに大学生までフッカーでプレーする機会は多くなかった。
「僕は高校、大学とフィールドプレーは得意だったんですけど、安定してフッカーの練習をしたことがなかったんです。高校ではずっとフッカーをやりたかったんですが、1番と3番を組める人がいなくて高1は3番、2年以降は1、2番で、ユース代表に呼ばれたときはフッカーで。大学もフッカーで入ったんですが、ほぼほぼ1番で、ユースはなぜかフッカーという。たまにフッカーをやるぐらいでちゃんとやったことがなくて、スクラムもそうですけどセットプレーが自分の課題と思っていて、それも含めてブレイブルーパスに入りたいと思ったんです」
 現GMの薫田真広から猪口拓、湯原祐希、森太志ら、東芝ブレイブルーパス東京のフッカーは日本代表に名を連ねてきた。橋本はそこに、継承すべきプライドを見つける。
「僕自身、もちろんスタートで出ることを目標にしているので、それはずっと目指していますけれど、試合に出た選手がウチの代表です。太志さんとは、全員が同じパフォーマンスを出して、そのうえで自分の個性を出せればいいね、と話しています。東芝のフッカーは神聖なものじゃないですけど、昔から言われているように代表に行くべくして行くというか。僕のなかでもウチで試合に出るフッカーは一流じゃなきゃいけない。2番を着るのは特別なこと。そこはすごく意識しています」
 ラガーマンとしてのこだわりはシンプルだ。シンプルだからといって簡単などではなく、責任と自覚を持って取り組んでいる。
「深谷高校で指導を受けた横田典之先生が、『身体を張っていない人の言葉は響かない』と言っていて、その言葉をずっと大事にしています。ディフェンスで身体を張ることができないと、ラグビー選手として認めてもらえない。スキルがあってうまくても、身体を張れない人の言葉は軽くなってしまう。だからこそ、ウチだったらマイケルさん、德永さん、藤田の言葉は重い。それは僕のなかでのこだわりとしてすごく持っていて、そこだけは引きたくない。周りの評価は分からないですけど、自分ではこだわっています」

 東芝ブレイブルーパス東京の選手として、必ず成し遂げたいことがある。16年度の加入時から、胸のなかで膨らみ続けている野心がある。
「これまで大きなタイトルを取ったことがないんです。全国優勝の経験がありません。深谷高校では埼玉県大会で優勝しましたが、花園はベスト16で負けました。筑波大学でも、大学選手権の決勝に2回いっていますが、負けている。優勝したい気持ちは強い。それは、トッドHCがよく話しているように、1試合1試合の積み重ねで、過程がすごく大事だと思っています。トッドHCは優勝、優勝とはあまり言わなくて、いい準備をして、いいラグビーをした結果だと。ブレイブルーパスらしいラグビーをしたうえで、そういう結果をつかめたらいいなと思っています」

 大切な人を失う、という悲しみを経験してきた。故人をしのぶ思いを心の芯として、橋本はラグビーに打ち込んでいる。
「社会人1年目に、母親が亡くなったんです。5月に初めて日本代表に選ばれて、韓国で試合を終えて日本で香港と試合をするときに、母親が体調を崩してしまって。日本代表としての姿を、見せることができなかったんです。一番応援してくれた人だったので、改めてもっとラグビーを頑張ろうと思いました。それは湯原さんが亡くなったときも同じです。自分を応援してくれていたふたりが亡くなってしまったので、それ以降は頑張ろうと」
 20年9月に湯原が急逝したことをひとつのきっかけに、橋本はプロ選手に転身した。「もっとラグビーを頑張ろう」という気持ちを、行動に移したのだった。
「40歳を過ぎてもプレーした大野均さんのような方もいますが、基本的にはそこまでやるのは難しい。人生のなかで本気でスポーツができる期間は、本気でやり切りたいと思った。湯原さんが亡くなったことでそう強く思うようになり、プロという選択をしました」

 1月28日に29歳の誕生日を迎える。ラグビー選手としてのキャリアは、円熟期に差しかかってきただろうか。自身の「完成形」を問われると、橋本は「難しいですね……」と苦笑いを浮かべつつ、しっかりと言葉を紡いでいった。
「基本的に大きな選手に負けたくない。観ている人もそうですけど、デカいやつを倒すと『おおっ』となるじゃないですか。僕はワーナーみたいにデカいわけじゃなく、特別なものを持っているわけでもないので、自分に必要なことをやり続けていく。太志さんから学ぶことはまだまだたくさんあるし、新しく入った(原田)衛からも色々な刺激をもらっています。色々な人から刺激をもらいながら、最後にキャリアを終えるときは、まだちょっとやりたいとかいう感情を持たずに終えたいですね」
 そこまで話すと、橋本は「まだまだ全然良くなると思っているので、やめるつもりは全然ないですよ」と言い添えた。22年の夏シーズンには、6年ぶりに日本代表のキャップをつかんでいる。ずっと追い求めてきた高みへ辿り着くために、橋本は自身のレベルアップを東芝ブレイブルーパス東京の成長へつなげていく。

(文中敬称略)
(ライター:戸塚啓)



【連載企画】東芝ブレイブルーパス東京 「物語り」
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【チケット情報】
ぜひ試合会場にお越しいただき、東芝ブレイブルーパス東京の応援をよろしくお願いします!
1/7(土)静岡ブルーレヴズ戦(@等々力陸上競技場)
1/22(日)トヨタヴェルブリッツ戦(@秩父宮ラグビー場) 
1/28(土)花園近鉄ライナーズ戦(@秩父宮ラグビー場) 

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