【物語りVol.23】 SO 松永 拓朗

 自分は有名な選手ではなかったんです、と松永拓朗は言う。
「中学校からラグビーを始めましたが、目ざしていた高校には行けませんでした。でも、進学した大阪産業大学付属高校で、素晴らしい先生にラグビーを教えてもらい、天理大学では1年生から試合に出させてもらいました。人生の節目でとてもいい出会いに恵まれ、いいチームに巡り合えている。それがラグビー人生をここまで築いてこられた一番の要因かな、と思います」
 ひとつ年下の弟の存在も、拓朗の心に火を灯した。「小さい頃は何をするにも一緒だった」という貫汰は、早くからラグビー選手として注目を集めていた。現在はコベルコ神戸スティーラーズに属している。
「弟は中学から大阪の代表に入っていて、それなりに知られた存在でした。僕と同じ高校へ進んで、U20セブンスのアカデミーへ行って。周りからも評価は高かったですね。『弟はすごいけど兄貴はそんなでもない』と思われたくない、というのが自分のなかであって。弟が先に名前を売ったおかげというか、弟に負けないという気持ちがあったから、ここまで頑張ってこられたのかなと思います」

 感謝の気持ちも成長の原動力となった。
「僕は元々ソフトボールとグローブ空手をやっていたんですが、中学へ上がるときにソフトボールの監督さんに『ラグビーをやってみたらどう?性格的にも向いてると思うで』と言われて。とりあえず体験入部してみたら面白くて、そこから始めたんです」
 ラグビーをはじめるきっかけを与えてくれた恩師に、練習の合間を縫って近況を報告していった。試合を観に来てくれることもあった。
「けれど、大学3年の終わりぐらいにお亡くなりになったんです。天理大学で大学日本一になったことと、東芝ブレイブルーパス東京に入ることができたことを報告できんかったのは、僕のなかでは心残りというか……」
 ラグビー選手としての成長を止めないことが、恩師の思いに報いることになる。松永は天理大学から21年2月に東芝ブレイブルーパス東京に加入し、同年4月のトップリーグで公式戦初出場を果たす。

 昨シーズンのリーグワンでは、開幕節からスタートメンバーに名を連ねていった。本来のスタンドオフではなく、フルバックで主に起用された。
「開幕戦のポジションがフルバックで、プレシーズンでめっちゃやってたわけじゃなかったので、メンバー表を見て自分でも驚きました。やるならスタンドオフかな、と思っていたので。でもいまは、どのポジションをやりたいというのは正直なくて。将来的にはスタンドオフをメインでやりたいですけど、いまはやっぱりゲームを重ねて、経験を積むことが最優先なので」
 試合を重ねることで、自身の変化を感じている。
「このチームを選んで良かったという思いが、すごく強いんです。ファミリー感がすごくあって、アットホームな感じがいいなと思って選んだんですけど、ホンマにそのとおりで。だからこそ、このチームのために身体を張らないといけない、勝たないといけない、という思いが試合後にいつも沸き上がるんです」

 今シーズンは46人の選手が所属している。グラウンドに立つ選手がいる一方で、悔しさを噛み締めながらグラウンドを見つめる選手もいる。チームメイトの様々な思いを感じ取っているからこそ、松永は自らと厳しく向き合うのだ。
「社会人はリーグ戦ですし、学生みたいにこの試合に負けたら引退という感じではないので、1試合、1試合に賭ける思いがそんなに強くないのかなと想像していたんですけど、負けたらやっぱりめっちゃ悔しいんです。僕だけじゃなく周りの選手たちも、めっちゃ悔しがってると感じるし。試合に出られない選手も、勝つためにハードワークしてくれている。すごくいいチームだなと改めて感じていて、だからホントに勝ちたいんです」
 チームの勝利に貢献する先には、存在感を増した自分を思い描く。
「ブレイブルーパスの中心選手に、リーダー的存在になりたいし、なっていかないといけないと思っています。『拓朗がいたら安心やな』と思ってもらえるように、ゲームメイクのところもそうだし、チームを引っ張っていく選手が、いまのところは理想です。チームの顔ではないですけれど、ファンのみなさんに『東芝ブレイブルーパス東京と言えば松永だな』と思ってもらえるような選手になりたいです」

 逞しい向上心と強い成長意欲は、東芝ブレイブルーパス東京のカルチャーにピタリと当てはまる。このチームで真摯にラグビーに取り組むことで、松永は自らの可能性を広げているのだ。
(文中敬称略)
(ライター:戸塚啓)



【連載企画】東芝ブレイブルーパス東京 「物語り」
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【チケット情報】
ぜひ試合会場にお越しいただき、東芝ブレイブルーパス東京の応援をよろしくお願いします!
1/7(土)静岡ブルーレヴズ戦(@等々力陸上競技場)
1/22(日)トヨタヴェルブリッツ戦(@秩父宮ラグビー場) 
1/28(土)花園近鉄ライナーズ戦(@秩父宮ラグビー場) 

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