【物語りVol.24】 NO.8 リーチ マイケル
リーチ マイケルの表情が明るい。
リーグワンの昨シーズン中盤から調子を上げていき、今春と今秋の日本代表シリーズでも大いに存在感を発揮した。
「19年のW杯後に手術をしてから、なかなか調子が上がらなかったんですね。日本代表でもチームでもあんまりいいプレーができなくて、手術をしたひざと股関節が痛くて、ハードなトレーニングができなかったんです」
日本代表のジェイミー・ジョセフHCからは、「ロックをやらないか」と言われた。キャリアに終わりを告げるあの二文字が頭をよぎるなかで、リーチは東芝ブレイブルーパス東京のサム・ワードFWコーチに率直な思いを打ち明けた。
「去年の2月頃に、どうやって立て直すのかサムに相談したんです。周りの期待に応えられない、頼られる存在になれていない、と」
自らがイメージするプレーと実際のパフォーマンスは、大きくかけ離れていた。本来の自分を、どうしたら取り戻せるのか。サム・ワードとの話し合いのなかで、リッチー・マコウの名前が出てきた。自身とポジションの重なる元ニュージーランド代表FWのプレーに、復活へのヒントを見つけた。
「試合を観ていると、彼はどんなところにもいるじゃないですか。なぜかと考えたときに、試合を通して寝ている時間が28秒だけ。5分ぐらいだと思っていたので、『マジか、だから参加する回数が多くなるんだ』とサムと話して、寝てる時間をなくす、倒れたらすぐに立ち上がることを目標にしました。それだけじゃなく、練習後にタックルして立ち上がる練習をやって、走って、タックルやってまた走って。それをやっていったら徐々に調子が上がって、プレーの回数もだいぶ増えて、プレー中にいいところにいることもできるようになっていきました」
日本代表でも、高評価を得ていく。
「リーグワン後の日本代表候補のキャンプからいいスタッツを出せて、そのまま6月のウルグアイ戦でもいいものを出せて。ジェイミーが少しずつ評価してくれて、少しずつ成長を続けたのは良かったと思います。膝が痛いところもあるけど、それもだいぶなくなってきて、股関節周りも良くなってきて。日本代表でのスタッツもタックルの回数、ランのメーターも上がっていって。まだまだいけるな、と思いました」
来たるリーグワンでは、昨シーズンの4位を上回る成績を目ざす。リーチの表情に、鋭さが宿った。
「昨シーズン4位になったのは個人的に嬉しくて、以前の強いブレイブルーパスから一気に9位、6位、11位、9位だったので。負けグセがついたブレイブルーパスがあって、粘り強さがなくなったときにトッド(・ブラックアダー)HCが来て、少しずつチームのカルチャーや、積み重ねてきたことが勝利につながっていった。少しずつチーム内に自信が出てきたのは良かったです」
チームの成長には手ごたえを感じている。そのうえで、「僕らはチャレンジャー」と言う。
「チームはまだ学び続けていると思います。いい選手、いい外国人選手も獲得して、どうやって勝つかをつねに考えながら周りにいい影響を与えてくれる選手がいる。チームのスタンダードをどう引き上げるかが、ウイニングカルチャーにつながると思います。試合を重ねるごとに少しずつチームがいい感じになっていくでしょう」
10月に34歳になった。ラグビーに対するモチベーションは、ここにきて再び燃え盛っている印象だ。
「15年のW杯のときに、長女が通っている幼稚園へ行ったら、子どもたち全員が僕を知っていた。それが嬉しかったんですね。小さな子どもたちが僕の名前を知っているなんて、想像もできなかった。それもあって、2歳の息子にも自分のプレーを見せたい。もしここで引退したら、僕のプレーの記憶がないですからね。あとは、ファンのみなさんに恩返しをしたい、という気持ちがあります」
フィジカルコンディションが整ってきたことで、「やっとまた、ラグビーが楽しくなってきた。練習もすごく楽しい」と笑みを浮かべる。愛する東芝ブレイブルーパス東京のために、リーチは接点へ飛び込み、身体をぶつけ、何度でも立ち上がるのだ。
(文中敬称略)
(ライター:戸塚啓)
【連載企画】東芝ブレイブルーパス東京 「物語り」
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