【物語りVol.77】島地 利奈 副務

 何となく分かっているようで、実はしっかりと理解できていない。
 島地利奈が担当する「副務」とは、そんな仕事と言っても良さそうだ。
「部活動のマネジャーを、想像してもらえるといいですね。チームマネジャーのバックアップとして動くのが主な役割ですが、もう何でもやります。プレシーズンではアナリストの方のサポートで、映像を撮影したりもしました」
 幼少期から英語に親しみ、ニュージーランドの大学で学んだ。英語でのコミュニケーションに円滑で、オフフィールドでは外国人選手や外国人スタッフの生活のサポートもする。
 試合中はコンカッション(脳震とう)の通訳を担当している。疑いのある選手が出ると、島地は医務室へ急ぐ。
 デスクワークもこなす。外国人選手やスタッフのビザの手続きも重要な仕事だ。
「ビザの取得や更新にあたって、入国管理局、市役所、警察署などの行政機関とやり取りをします。そこでは法的な知識を問われたりするので、行政書士などの勉強を始めたほうがいいな、と思っています」
 勉強を始めたほうがいいと思っているものの、その時間を見つけるのが難しい。島地の仕事は、守備範囲がとにかく広いのだ。
「守備範囲が広い人間のほうが使いやすいでしょうし、広くなったら浅くなりがちですけど、私は欲張りなので広く深くいきたいタイプなんです」

 ラグビー経験者ではない。猛烈なファンというわけでもなかった。それでも、ニュージーランド留学中にはラグビーの試合を観た。大学卒業後に初めて日本で就職したのは、22年5月に活動を休止した宗像サニックスブルースだった。
「大学卒業が21年の12月で、年末からチームに合流して22年の2月に廃部になると言われまして。こんなにもすぐに次のキャリアを決めなきゃいけなくなるとは、思ってもいませんでした。でも、廃部というピンチをどうチャンスに変えていくのかが大事だと。幸いにもいくつかオファーをいただいて、そのなかで東芝ブレイブルーパス東京さんに決めました」
 東芝ブレイブルーパス東京を選んだのは、「誠実さ」を大切にするチームのカルチャーに共感したからだった。それに加えて、自身を客観視した結果である。
「周りのみなさんがどう思っているのかは分からないですが、一般的に東芝にいる方と自分は違う、と感じています。どう考えても毛色が合わない。でも、自分のような毛色の違う人間がいることで、何かひとつ確変を起こすことができて、それによって組織が飛躍できるなら、チームの利益になるんじゃないかと考えました」

 副務としての仕事は、チームの勝敗に直接的に結びつくものではない。「縁の下の力持ち」と言うべき仕事だ。
「私自身は直接的な成果にこだわっているわけではないので、自分の仕事がよりよい環境整備につながっていれば本望です。東芝ブレイブルーパス東京に来て間もないので、周りのみなさんに不便さを与えている感覚しかなく、それはたぶんここにいる以上永遠の課題になると言いますか……。自分ひとりでできることはあまりなくて、絶えず誰かと協力していかないと成り立たないので、人に恵まれているのはありがたいことです。それは、このチームに来てからだけでなく人生を通して、人に恵まれていると感じます」
 東芝ブレイブルーパス東京には、「人を育てる」カルチャーがある。
「育ててくれていると思うんですけど、甘っちょろい育てかたじゃないですね。それも、私の性に合っています」
 バイタリティ溢れる才女は、そう言って素敵な笑みを浮かべた。

(文中敬称略) 
(ライター:戸塚啓)


【連載企画】東芝ブレイブルーパス東京 「物語り」
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【チケット情報】
4/21(金)はついに最終節、昨年度優勝の埼玉ワイルドナイツとの対戦となります。プレーオフトーナメント出場(4位以上)を果たすためには決して負けられない戦いとなりますので、皆様のご声援をよろしくお願いいたします。
4/21(金)埼玉ワイルドナイツ戦(@秩父宮ラグビー場)

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