【物語りVol.84】「頂点」への戦いは始まっている 

■有料入場者数にこだわりながら、前シーズンを上回る平均入場者数を記録

 6月14日(水)、東芝ブレイブルーパス東京は定例記者会見を開きました。2022―23シーズンレビューを大きな柱としたもので、最初に荒岡義和代表取締役社長が、事業の観点からシーズンを振り返っていきます。
 昨年9月の定例記者会見で、荒岡社長は「3年後の売上げ目標を10億円に設定し、そこからの逆算で2022-23シーズンは5億円の売上げを目ざす」としていました。実際の売上は4億円超と報告され、「目標の80パーセント超の業績。目標をクリアできなかったので厳しい結果と受け止めています」と話しました。
 5億円に届かなかった要因として、荒岡社長はホストゲームの1試合平均の入場者数をあげました。8000人を目標としていましたが、5993人に止まりました。
 ただ、前シーズンに比べると1.4倍の数字であり、リーグワンのディビジョン1の平均入場者数5744人を上回っています。さらに言えば、昨シーズンまでとの大きな違いとして、有料入場者数に強くこだわりながらホストゲームの観客動員を伸ばしています。そこには、事業会社としての矜持があります。
「お金を払って見に来ていただく文化を根づかせたいということと、我々自身の緊張感を高めるためでもあります。チームとしてはお金を払って足を運んでくださっているファンのみなさんに、きちんとしたプレーをお見せする。勝敗をこえて良かったな、楽しかったなと思ってもらえるゲームをする。興行をしているスタッフも、お客さまに来て良かった、楽しかったと思わせる施策を打つ。そのため、有料にこだわってきました。有料入場者数は、前のシーズンより170パーセントの増加です」

■ユニークなチームグッズが人気を集めて

 2022-23シーズンのホストゲームでは、独自性と斬新さを両立したイベントや企画を数多く打ち出しました。ピッチ上の音をスタンドに届ける新音響システム『リアル・グラウンド・サウンドシステム』を取り入れ、チーム歌『王者 猛勇狼士』がスタンドの熱を高めました。
 ユニークなチームグッズを続々と展開し、その多くが好評を博しました。大野均アンバサダーがプロデュースした日本酒と焼酎や、オリジナルクラフトビールも観衆に喜ばれました。また、抽選で選ばれたファンクラブ会員が、選手に見送られてスタジアムを後にする『ブレイバーファミリーロード』は、多方面から賞賛を得ています。
 プロスポーツの興行では、勝利を約束することができません。だからこそ、スタジアム全体を誰もが楽しめる空間に仕立て上げていったのです。
 そのうえで、ホストゲームでは1万2000人の集客を目ざしました。これについて星野明宏プロデューサーは、「我々のコア層は4000人ぐらいだと感じていて、残りの8000人をこれからどう獲得するか。2022-23シーズンの東京サンゴリアス戦、埼玉ワイルドナイツ戦は1万人を超えたので、ラグビーファンは6000人ぐらいいると考えられます。あとの2000人はライト層を取り込むことになるので、そういう人にどうやって試合があることを届けていくか」と語ります。周知徹底については、ホストゲームを主催するクラブはもちろんですが、リーグ全体での情報発信も必要になってくるのでしょう。
 ファンクラブの加入者数は、3倍増の6000人を目標としました。こちらは7408人で、目標を大きく上回っています。無料会員が数字を押し上げたのですが、会員にはメルマガなどの情報を配信していきます。「私たちのクラブに興味を持っていただき、将来的にコアファンになっていくいただくため」(荒岡社長)の種まき、と言うことができたでしょう。
 親会社の東芝以外で協賛をしていただいたパートナー企業は、約90社にのぼりました。前シーズン比1.5倍で、「目標を達成できました」と、荒岡社長は報告しました。

ブレイバーファミリーロード

■「真の王者になれるチームへ」

 続いて、薫田真広GMがシーズンを振り返ります。
「クボタスピアーズ船橋・東京ベイがプレーオフを制して初優勝を飾り、日本ラグビーの歴史を変えました。大きな一歩でした。プレーオフに進出すれば、どのチームにもチャンスはある。それぐらいの混戦になっている。そういったレビューをして、プランニングをしていくのが大事です」
 チームの戦いぶりについては、過去の定例記者会見でも触れたボーナスポイントの重要性を指摘しました。プレーオフ進出に必要な勝点を53、ないし54に設定すると、「ボーナスポイントの取りかたと、獲得した試合数が影響してくる」と言います。さらには、ペナルティを減らすことも課題にあげました。「規律を重んじてファンのみなさんに愛され、真の王者になれるチームへ」と語りました。
 新シーズンはW杯後に開幕する「非常にイレギュラーなシーズン」(薫田GM)となります。シーズン中の試合がこれまで以上にタフになることが予想されるため、前シーズンからプラス4人の50人体制でチームを編成するとの構想を描きます。
 9月開幕のW杯が終了すると、ニュージーランド代表のリッチー・モウンガ選手、シャノン・フリゼル選手がチームに合流します。W杯に出場するに違いないビッグネームは、東芝ブレイブルーパス東京以外のチームにもやって来ます。
「ビッグネームがW杯以降にたくさん入ってきて、リーグ間での移籍も大きく動く。昨シーズン以上に、チーム力を想像しにくい。我々のチームにもふたりのビッグネームが加入しますが、とくにSOのモウンガにはビクトリーラグビーができるようなゲームコントロールに期待したいですね」
 新シーズンへの準備として、森田佳寿コーチ、髙橋昂平選手、杉山優平選手、森勇登選手が、ニュージーランドへ研修に行っています。森田コーチはすでに帰国しています。3選手は昨年度のプレータイムが少なかったことから、「プレー経験を積んでもらう」(薫田GM)ことで選ばれました。

2023-24シーズン加入予定のリッチー・モウンガ選手(1/7撮影)

■「クルセイダーズと東芝には共通点がある」とトッドHC

 母国ニュージーランドに一時帰国中のトッド・ブラックアダーHCも、オンラインで参加しました。荒岡社長と薫田GMのレビューを聞いていた指揮官は、「荒岡さんは目標に達成できなかったと言っていましたが、僕ら現場は試合をしながら、よりファンがついているな、よりサポートを受けられているな、と感じることができました。そこは非常に感謝しています」と話しました。また、「薫田さんは僕が話そうと思っていたことに触れてくれました」と切り出します。このあたりの認識にズレが生じないところが、東芝ブレイブルーパス東京の素晴らしさと言えるでしょう。
「アタックはリーグトップクラスの数字を残せたし、スタイルを確立できたのかなと思います。ディフェンスはフィジカリティでスタンダードに達しなかったのと、相手のアタックのボールを遅らせることができなかった。その点で後手に回ってしまった。全体としてレベルに達していなかったので、次のシーズンは新しいディフェンスコーチと新しい方針で、しっかりと改善をはかっていきたい」
 その後もキックの使いかたやセットピースなどの改善点を、トッドHCはあげました。さらに、視察でニュージーランドを訪れた森田コーチにも触れます。
「私とヨシ(森田)でクルセイダーズに1週間帯同させてもらい、彼我の練習を比較して、自分たちのどこが機能しているのかを見ることができました。同時に、クルセイダーズとの比較で、自分たちがかなり高いレベルでやれていることが分かりました。細かい修正の学びはありましたが、ヨシはブルーズにも1週間行き、僕らのどこが機能していて、機能していないのかを明確にあぶり出せました。あとは、しっかり手を打っていくだけです」
 ニュージーランド滞在時に、トッドHCはクルセイダーズの殿堂第1号として表彰されました。「クルセイダーズと東芝は、組織も中にいる人たちも共通点がたくさんある。殿堂入りのパーティーでは、東芝を勝利へ近づけている仕事を担っていると、改めて確認することができました」と、ニュージーランド滞在中も東芝ブレイブルーパス東京に思いを馳せていることを明かしました。

■オフシーズンも収益を上げるために

 最後に、釜澤晋事業運営部部長が、オフシーズンの取り組みについて説明しました。リーグワンの試合が行なわれていないこの時期も、事業会社は収益を上げていく必要があります。釜澤部長は「オフシーズンに少しでも収益をあげられるように、かつ来シーズンの集客や今後のクラブ活動に、どうやってつなげるのかを議論している」と説明します。
 現在はクラブ内でアイディアを揉んでいる段階ですが、釜澤部長は「8月には何らかの活動をしていきたい」と意欲的です。荒岡社長が補足します。
「事業にオフシーズンはなく、普及やファンの開拓は休まずやっていくという認識で、W杯でパブリックビューイングができないものか。ホストエリアの自治体や周辺の民間企業さんの力を借りながら、何かできないかと考えています」
 東芝ブレイブルーパス東京では、株式会社バディ企画研究所(略称:バディスポーツ)と連携し、4月より『バディ×東芝ブレイブルーパス東京 アカデミー』を開校しています。荒岡社長は「普及と育成は大事ということで、U12とU15のアカデミーにも力を入れています」と説明します。5年後、10年後につながっていくたくさんの施策が、2022-23シーズンに動き出したことが分かるでしょう。
 日本代表がW杯で勝ち上がれば、直後のリーグワンへ熱狂が広がっていくでしょう。しかし、荒岡社長は「自分たちでコントロールできないので、W杯頼みにしてはいけない。2022-23シーズンの反省をして、レビューをして、 W杯を見て、より良い興行ができるようにしていきたいです」
 現場を統括する薫田GMも、高い志を掲げながら足元をしっかりと見つめます。自分たちが追い求める理想像に、ブレはありません。
「チームとしては昨シーズン以上に『猛勇狼士』を体現する。そして、我々のDNAである『接点無双』を忠実にファンの方々にお披露目できるように、しっかりチームを作っていきます」
 チームの先頭に立つトッドHCは、「僕らはイチバンになれると信じています」と言います。そのために何をしていくのかも明確です。
「高い目標を掲げて、プレシーズンの初日からそれに向かって全力で取り組んでいくことになります。東芝で5シーズン目となりますが、次のシーズンはすべてをしっかりと形にしたいと思っています」
 国内の頂点を、はっきりと意識して。東芝ブレイブルーパス東京は、新シーズンへ向けて動き出しています。


【連載企画】東芝ブレイブルーパス東京 「物語り」
・物語り一覧はこちら

関連リンク

LINK

パートナー

PARTNER

このページのトップへ