【物語りVol.85】プレシーズンから、一歩ずつ前へ
■藤田貴大氏がアシスタントコーチに
7月18日(火)、東芝ブレイブルーパス東京は定例記者会見を行ないました。リーグワンのオフシーズンも事業会社としての動きを止めることはなく、継続的に情報を発信しています。
今回は2023-24シーズンの新体制発表と、オフシーズンの取り組みについての説明がありました。出席者は荒岡義和代表取締役社長、薫田真広GM、釜澤晋事業運営部長です。
最初に荒岡社長があいさつをし、薫田GMにマイクを譲ります。2023-24シーズンのチーム体制として、トッド・ブラックアダーHC、森田佳寿コーチングコーディネーターの体制継続が、改めて報告されました。スタッフにはDFコーチにタイ・リーバ氏、アシスタントコーチに藤田貴大氏が新たに着任しました。
「タイ・リーバは昨年までコベルコ神戸スティーラーズさんで仕事をしていました。藤田は昨年までプレーヤーで、東海大学在籍時からリーダーシップを発揮していて、今後はラグビー界の大きな財産となる人材です。幅広くチームに関わってもらい、経験を積んでもらいたいと考えています」
また、ハイパフォーマンスアナリストとして、トップリーグ当時から複数のチームに関わり、日本代表でも仕事をしてきた宮尾正彦氏が加わりました。さらに、日野レッドドルフィンズで宮尾氏とともに仕事をしていた小沼和也氏が、アナリストに名を連ねました。アナリストは3人体制です。
アスレティックトレーナーは、3人から4人に増員されました。「リーグワンの試合の強度が年々上がっていて、選手の身体のメンテナンスが重要になっています。そのあたりをしっかり強化したい」と、薫田GMは説明します。昨年までインターンの立場で関わっていた風間怜実氏と、契約を結びました。
また、通訳も新任がふたり加わりました。こちらは3人体制です。
採用担当には、OBが戻ってきました。06年から19年まで在籍した藤井淳氏です。薫田GMによれば、勇退後は業務で評価を得ていた同氏ですが、「ラグビーのサポートをしてもらいたいと本人に可能性を確認したところ、ラグビーと東芝に対して自分の力が必要なら協力しますと言ってもらいました」とのことです。採用担当の望月雄太氏とともに、将来有望な学生のリクルートに奮闘することでしょう。
■効果的な補強で選手層が充実
選手については、昨年末に発表されたリッチー・モウンガ選手、シャノン・フリゼル選手を除く5人の新加入が発表されました。
日本代表12CapのLOアニセ サムエラ選手(静岡ブルーレヴズ。カッコ内は前所属、以下同)、LO/FLのPJ・スティーンカンプ選手(ライオンズ)、CTBロブ・トンプソン選手(トヨタヴェルブリッツ)、UTBマイケル・コリンズ選手(オスプレイズ)、CTB/WTB岩渕誠選手(防衛大学校)です。
それぞれの選手について、薫田GMがその特徴を説明します。
「サムエラは日本代表のキャリアがあり、ロックとしてタイトなプレーができる。昨年のプレーを見ても、リーグワンの強度の高いゲームで求められるロックのプレーができています。スティーンカンプはフランカーをベースにロックもできる選手。コンタクトと瞬発性が高い。チームに勢いを与えられる選手です」
サムエラ、スティーンカンプの両選手は、198センチのサイズを誇ります。薫田GMは「昨シーズン一番の反省として、2メートル以上のジェイコブ・ピアスとワーナー・ディアンズに、ハードワークをさせてしまったことがあげられます。彼らを除くと高さが足りなかった。シャノン・フリゼルも195センチで、2メートル近い選手が3人入り、大型化を図ることができました」と、補強の成果を語りました。
ロブ・トンプソン選手は、勇退したバーガー・オーデンダール選手の後継候補にあげられます。「突破力のある大型のセンターをもう一枚、ということでの契約です」と、薫田GMはその意図を説明します。
ユーティリティバックスのマイケル・コリンズ選手には、「フルバック、ウイング、センターをカバーしてもらいたい」との期待を込めます。さらに、その波及効果にも触れました。
「松永拓朗がフルバックで2シーズンほぼ出続けていて、彼にレストを与えつつ、他のポジションでも有効に使いたい。コリンズが加入することで、シーズンを通して色々なメンバー構成が可能になる。どこのポジションで出るのか、みなさんも期待してもらえれば」
■東芝ブレイブルーパス東京ならではの新加入選手も
岩渕選手の加入は、会見に参加したメディアの注目を集めました。現時点で全国的に無印の存在だからです。
薫田GMによると、「高校まではサッカーをしていて、大学からラグビーを始めた」とのことです。その経歴どおりにキッキングのスキルが高く、「向上心もあって賢い選手で、非常にポテンシャルがある」と評価します。
今春に防衛大学校を卒業後、岩渕選手は自衛官任官も考えたそうです。しかし、より高いレベルでラグビーをしたいとの気持ちから、東芝ブレイブルーパス東京のテスト生となりました。「テスト生として2か月過ごしてもらい、彼のラグビーのスキルや性格、取り組む姿勢などを評価し、このチームに必要と判断した」(薫田GM)とのことです。
東芝ブレイブルーパス東京は、かねてから人材育成に定評があります。岩渕選手のこれからが楽しみです。
さらに薫田GMは、モウンガ選手とフリゼル選手にも触れました。ふたりはニュージーランド代表にセレクトされており、7月上旬から開催中の『ザ・ラグビーチャンピオンシップ』に出場しています。
「ここまでの2試合を観ると、非常にパフォーマンスがいい。このままW杯へ向けてポジションを勝ち取ってもらい、しっかりとしたパフォーマンスを期待しています」
昨シーズンまでの反省を踏まえ、補強ポイントを的確に絞り込む。そのうえで、東芝ブレイブルーパス東京のチームカラーを大切にする。楽しみな陣容が整いました。
■オフシーズンに3つの施策を実施へ
続いて、釜澤事業運営部長が、オフシーズンを含めた今後の取り組みについて説明をします。事業会社としての東芝ブレイブルーパス東京は、オフシーズン、プレシーズン、シーズン中を問わずに収益基盤を維持強化していく必要があります。釜澤部長もオフシーズンの収益基盤に触れ、合わせて「継続的な普及活動を検討して実施していきたい」と話しました。
その具体策として、以下の三つが示されました。
●8月中のラグビー体験イベントの実施
●ラグビーワールドカップ関連イベント
●シーズン中のビジターゲームでのパブリックビューイング
8月のラグビー体験イベントについては、26日開催で調整が進められています。猛暑を避けるために夕方からの実施とし、「子どもや親子連れだけでなく、大人も参加できるもの」(釜澤部長)を想定しています。
「チームスタッフ、選手に協力してもらい、府中の天然芝グラウンドで選手がどういう練習をしているのか、どういうコーチングを受けているかといったものを、実際に体験してもらいたいと思っています」
体験型のイベントですから、選手のたくましさを目の前で感じたり、素顔をのぞいたりできるかもしれません。東芝ブレイブルーパス東京だからこその、ユニークなイベントになりそうです。
ふたつ目のラグビーワールドカップに関連したイベントは、全国各地で様々なものが実施されるでしょう。他のイベントとの差別化をはかるためにも、釜澤部長らは東芝ブレイブルーパス東京ならではの独自性を打ち出そうとしています。
ラグビーワールドカップに出場する日本代表候補に、東芝ブレイブルーパス東京からリーチ マイケル、ワーナー・ディアンズ、ジョネ・ナイカブラ、ニコラス・マクカランが招集されています。彼らには、フランスを舞台とするワールドカップでの活躍が期待されます(注:ワールドカップのメンバー発表は8月15日予定)。
「東芝ブレイブルーパス東京の私たちの仲間を応援する機会として、我々独自の企画を行ないたい。リーチら我々の仲間がワールドカップの試合に出るとなったときに、選手やコーチに協力してもらい、彼らの普段の様子を話してもらったりして、少し違った視点で試合を楽しめるようにしたいのです」
フランスと日本には時差があり、日本時間20時開始のプール戦2試合が対象となります。9月10日のチリ戦、10月8日のアルゼンチン戦です。「みんなで応援できるようにしたい」と、釜澤部長は意欲的に語ります。
三つ目のシーズン中のビジターゲームでのパブリックビューイングについては、ホストエリアを中心とした開催が想定されます。仕事や学校などの都合でビジターゲームへ行けないブレイバーのみなさんが、「一緒に応援できる場所を作っていきたい」(釜澤部長)とのことです。
また、プレシーズンマッチを通した交流も計画されています。昨シーズンから府中の天然芝グラウンドでのプレシーズンマッチで、有料席の設置やイベントが実施されています。これがブレイバーのみなさんはもちろん、選手からも好評を博しました。今シーズンはさらに充実したコンテンツを提供し、プレシーズンマッチからブレイバーとの一体感を作り出されていくのでしょう。
イベントの詳細は、ホームページで随時発表されていきます。
プレシーズンから、一歩ずつ前へ。東芝ブレイブルーパス東京に関わる人々は、自分たちに矢印を向けてハードワークをしていきます。
【連載企画】東芝ブレイブルーパス東京 「物語り」
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