薫田 真広 | GM
MASAHIRO KUNDA
生年月日 | 1966/9/29 |
---|---|
出身地 | 岐阜県 |
星座 | てんびん座 |
略歴 | 岐阜工業高校筑波大学 |
代表歴 | - |
在籍年数 | 21 |
薫田 真広の物語
■リーグワン2年目で示すべき「伸びしろ」
薫田真広の身体には、太い「芯」が通っている。
東芝ブレイブルーパス東京への溢れんばかりの帰属意識と、責任感と、愛着と、信頼に基づいた「芯」が。
2020年3月からGMを務めている。タイトルから長く遠ざかっている古巣の再建は、チームの存在意義を見つめ直すことからスタートした。
「自分はラグビー界に長年関わり、東芝には入社以来お世話になっています。2015年に東芝に会計処理の問題が起こったときに、ラグビー部の存在意義を考えました。ラグビーの価値を伝えるのはもちろんですが、どんな状況でもラグビー部を残すために何をしなければならないか。まずは結果を出していかなければならない。強いラグビー部であることが重要だ、と。その使命感を持って、いまこの仕事に就いています。1948年の創部から受け継がれてきたDNAを大事にして、東芝ブレイブルーパス東京らしさをもう一度見つめ直す、取り戻す。なおかつ、そのらしさをブランディング化して、我々の活動が東芝という会社の付加価値として評価されるようにする、それがこのチームの在りかたです。その近道として結果を残すことが、自分のなかでのミッションと考えています」
結果を残すことを意識しつつも、東芝のカルチャーを大切にする。自分たちの哲学や矜持といったものを、真っ直ぐに追求する。
「我々は人を大切にする、真面目な選手を新卒で採用し、育成していくのがチーム編成のポリシーです。そのうえで、つねにチャレンジすることを恐れず、チームとして変わること、変えていくことを恐れない。チーム名称にあるブレイブとは、グラウンドの中でも外でも、変わっていくことへのチャレンジ精神を持った選手を採用して、育てていくこと。それこそが我々のカルチャーです。とくに若い選手を育てていきながら、リーグのトップを目ざすわけですから、多少なりとも時間がかかるとは思っています」
リーグワンの2シーズン目を迎えるにあたって、チームのスピリットを『猛勇狼士』の4文字に込めた(詳しくは【物語りVol.1】を参照)。そこには、「変化を恐れない姿勢」を、選手たちのマインドに刷り込んでいきたいとの狙いがある。
「トップリーグからリーグワンになり、我々もチームからクラブとなった。それに対して、選手はどう変化に対応していくのか。プレーはもちろんですが事業に対しても、選手自身が当事者の目線に立つことが非常に重要です。選手たちには、なぜいまラグビーをやることができているのか、自分の給料はどこから生まれているのか、会社に対してどのように貢献したらいいのか、といったことをつねに考えてほしい。色々な方々の支援があってラグビーをやらせていただいていることを自覚して、感謝の気持ちを持ちながら、事業に対しても向き合ってほしいのです。パートナー企業さんをはじめとしたステークホルダーさんに、どうやってリターンを生み出せるか。ステークホルダーにリターンを生み出すことが自分たちの責任であり、クラブの存在意義でもある。そこは1年目のリーグワンを受けて、伸びしろを見せなければいけないことで、そのひとつとしてまずはパフォーマンスで結果を残すのがチームの使命です」
■「ユニークさ」とは「独自性」
コロナ禍ではスポーツを取り巻く環境が大きく変わった。入場者数に上限が設けられたり、声を出しての応援が禁止されたりするなかで、薫田はラグビーのある日常の豊かさを再確認したという。
「やりたくてもできないことがたくさんあって、コロナ対策で選手もスタッフも苦労してきました。色々な制約があるなかでも何とか試合をしようとみんなが頑張ってきた日々は、非常に大きな経験になっていると思います。ラグビーができる喜び、お客さんの前でプレーできる喜びは、コロナ禍で本当に身にしみました」
新型コロナウイルスの感染対策を継続しながらも、スタジアムには熱気が戻りつつある。観客との双方向の関係が、再び構築されていくのだろう。
「ラグビーの試合は選手が観客に熱を発して、観客がそれに反応して熱を返してくれるといったように、お互いのパッションがぶつかり合ってさらに会場の熱が作られる。それがゲームの質を高め、選手のパフォーマンス向上につながっていくと考えています。コロナ禍ではそういうものが生み出されなかっただけに、パッションというもののありがたみをすごく感じさせられました」
来る新シーズンへ向けて、クラブは「ユニークさ」を前面に打ち出す。日常会話では「独特な」とか「珍しい」といった意味で使われることの多いフレーズを、薫田はどのように受けとめているのだろう。
「真似事をするのではなく、独自性をどう生み出し、打ち出していくのかがすごく重要で、そういうものをプレーで体現していきます。戦いかたのベースはあるべきですが、そのなかでオリジナリティを生み出す」
オリジナリティを生み出すために、欠かせないものとは──ここでもキーワードとなるのは「変化」だ。自身の監督経験に照らし合わせて、薫田が説明をする。
「2002年に監督をやらせていただいたときに、当時の部長だった太田垣耕造さんに『監督任期は何年ですか?』と質問しました。太田垣さんの回答は『嫌になるまでやってみたら』のひと言で、『それでしたら、4年ください』ということで監督人生がスタートしました。4年かけてじっくりチームを作れば優勝できるというのがその裏付けで、長くなりすぎるチームに変化を見出せなくなり、東芝ラグビー部のためにならないと思い、4年間を区切りにさせてください、とお伝えしました」
就任1年目からタイトル争いを演じ、2年目にはチームとして4度目の日本選手権大会優勝を成し遂げた。3年目にはトップリーグ2004―2005優勝、マイクロソフトカップ優勝を果たした。4年目はトップリーグとマイクロソフトカップ連覇を達成し、日本選手権大会でも連覇を果たした。3冠の偉業である。
「4年目は全部のタイトルを取り、5年目の続投を要請されました。そして、トップリーグ1位通過、マイクロソフトカップ3連覇、日本選手権3連覇を達成しましたが、5年目のシーズン前から6年目の継続はないとあらかじめお伝えしました。なぜなら、自分自身のなかでそれ以上の変化を見出せない、と感じたからです。チームは毎年ユニークさを提示しなければならない、ラグビーのベースは同じでも違ったアプローチをしないといけない。その限界が、自分の場合は5年でした。ユニークさを示せず同じスタイルで戦うことは、チームのためになりません。いかに変化を見出すか。変化をもたらしていくか、が大事なのです」
■「プレーオフ進出が最低限のミッション」
トッド・ブラックアダーHCのもとで、チームは4シーズン目を迎える。昨シーズンは6シーズンぶりのベスト4入りを果たした。
「トッドHCのもとでベースを作ってきましたし、過去2シーズンは若い選手を多く起用してきました。リーグ戦で40人以上の選手を使ってきているのは我々だけです。そういうユニークさを持って、この2シーズンやってきた。そのなかで、種をまいた選手たちが昨シーズンは中盤以降に結果を残し、チームの成長につながりました」
3月27日のコベルコ神戸スティーラーズ戦から6連勝を飾り、11勝5敗の4位でプレーオフトーナメントに挑んだ。準決勝で東京サンゴリアスに競り負け、3位決定戦ではクボタスピアーズ船橋・東京ベイに敗れた。
「プレーオフではプレッシャー経験値の差、ノックアウト方式の試合の場数に差が表われました。場数ですから、経験を積み重ねていくしかない。トップ4の壁に触れて、今シーズンどう生かしていくのかが我々の新たなチャレンジ。プレーオフ進出が最低限のミッションです。チームスピリット『猛勇狼士』を言語化したことで、去年よりも成長した姿を体現していきたい。トッドHCが新たなユニークさをどう表現していくのか、私も楽しみにしています」
選手として、スタッフとして、栄光も苦悩も味わってきた。勝つことの難しさと喜びを味わい、敗戦がもたらす苦みも噛み締めてきた。薫田の身体を貫く芯が揺らぐことはなく、東芝ブレイブルーパス東京を目ざす場所へと導いていく。
(文中敬称略)
(ライター:戸塚啓)
薫田真広の身体には、太い「芯」が通っている。
東芝ブレイブルーパス東京への溢れんばかりの帰属意識と、責任感と、愛着と、信頼に基づいた「芯」が。
2020年3月からGMを務めている。タイトルから長く遠ざかっている古巣の再建は、チームの存在意義を見つめ直すことからスタートした。
「自分はラグビー界に長年関わり、東芝には入社以来お世話になっています。2015年に東芝に会計処理の問題が起こったときに、ラグビー部の存在意義を考えました。ラグビーの価値を伝えるのはもちろんですが、どんな状況でもラグビー部を残すために何をしなければならないか。まずは結果を出していかなければならない。強いラグビー部であることが重要だ、と。その使命感を持って、いまこの仕事に就いています。1948年の創部から受け継がれてきたDNAを大事にして、東芝ブレイブルーパス東京らしさをもう一度見つめ直す、取り戻す。なおかつ、そのらしさをブランディング化して、我々の活動が東芝という会社の付加価値として評価されるようにする、それがこのチームの在りかたです。その近道として結果を残すことが、自分のなかでのミッションと考えています」
結果を残すことを意識しつつも、東芝のカルチャーを大切にする。自分たちの哲学や矜持といったものを、真っ直ぐに追求する。
「我々は人を大切にする、真面目な選手を新卒で採用し、育成していくのがチーム編成のポリシーです。そのうえで、つねにチャレンジすることを恐れず、チームとして変わること、変えていくことを恐れない。チーム名称にあるブレイブとは、グラウンドの中でも外でも、変わっていくことへのチャレンジ精神を持った選手を採用して、育てていくこと。それこそが我々のカルチャーです。とくに若い選手を育てていきながら、リーグのトップを目ざすわけですから、多少なりとも時間がかかるとは思っています」
リーグワンの2シーズン目を迎えるにあたって、チームのスピリットを『猛勇狼士』の4文字に込めた(詳しくは【物語りVol.1】を参照)。そこには、「変化を恐れない姿勢」を、選手たちのマインドに刷り込んでいきたいとの狙いがある。
「トップリーグからリーグワンになり、我々もチームからクラブとなった。それに対して、選手はどう変化に対応していくのか。プレーはもちろんですが事業に対しても、選手自身が当事者の目線に立つことが非常に重要です。選手たちには、なぜいまラグビーをやることができているのか、自分の給料はどこから生まれているのか、会社に対してどのように貢献したらいいのか、といったことをつねに考えてほしい。色々な方々の支援があってラグビーをやらせていただいていることを自覚して、感謝の気持ちを持ちながら、事業に対しても向き合ってほしいのです。パートナー企業さんをはじめとしたステークホルダーさんに、どうやってリターンを生み出せるか。ステークホルダーにリターンを生み出すことが自分たちの責任であり、クラブの存在意義でもある。そこは1年目のリーグワンを受けて、伸びしろを見せなければいけないことで、そのひとつとしてまずはパフォーマンスで結果を残すのがチームの使命です」
■「ユニークさ」とは「独自性」
コロナ禍ではスポーツを取り巻く環境が大きく変わった。入場者数に上限が設けられたり、声を出しての応援が禁止されたりするなかで、薫田はラグビーのある日常の豊かさを再確認したという。
「やりたくてもできないことがたくさんあって、コロナ対策で選手もスタッフも苦労してきました。色々な制約があるなかでも何とか試合をしようとみんなが頑張ってきた日々は、非常に大きな経験になっていると思います。ラグビーができる喜び、お客さんの前でプレーできる喜びは、コロナ禍で本当に身にしみました」
新型コロナウイルスの感染対策を継続しながらも、スタジアムには熱気が戻りつつある。観客との双方向の関係が、再び構築されていくのだろう。
「ラグビーの試合は選手が観客に熱を発して、観客がそれに反応して熱を返してくれるといったように、お互いのパッションがぶつかり合ってさらに会場の熱が作られる。それがゲームの質を高め、選手のパフォーマンス向上につながっていくと考えています。コロナ禍ではそういうものが生み出されなかっただけに、パッションというもののありがたみをすごく感じさせられました」
来る新シーズンへ向けて、クラブは「ユニークさ」を前面に打ち出す。日常会話では「独特な」とか「珍しい」といった意味で使われることの多いフレーズを、薫田はどのように受けとめているのだろう。
「真似事をするのではなく、独自性をどう生み出し、打ち出していくのかがすごく重要で、そういうものをプレーで体現していきます。戦いかたのベースはあるべきですが、そのなかでオリジナリティを生み出す」
オリジナリティを生み出すために、欠かせないものとは──ここでもキーワードとなるのは「変化」だ。自身の監督経験に照らし合わせて、薫田が説明をする。
「2002年に監督をやらせていただいたときに、当時の部長だった太田垣耕造さんに『監督任期は何年ですか?』と質問しました。太田垣さんの回答は『嫌になるまでやってみたら』のひと言で、『それでしたら、4年ください』ということで監督人生がスタートしました。4年かけてじっくりチームを作れば優勝できるというのがその裏付けで、長くなりすぎるチームに変化を見出せなくなり、東芝ラグビー部のためにならないと思い、4年間を区切りにさせてください、とお伝えしました」
就任1年目からタイトル争いを演じ、2年目にはチームとして4度目の日本選手権大会優勝を成し遂げた。3年目にはトップリーグ2004―2005優勝、マイクロソフトカップ優勝を果たした。4年目はトップリーグとマイクロソフトカップ連覇を達成し、日本選手権大会でも連覇を果たした。3冠の偉業である。
「4年目は全部のタイトルを取り、5年目の続投を要請されました。そして、トップリーグ1位通過、マイクロソフトカップ3連覇、日本選手権3連覇を達成しましたが、5年目のシーズン前から6年目の継続はないとあらかじめお伝えしました。なぜなら、自分自身のなかでそれ以上の変化を見出せない、と感じたからです。チームは毎年ユニークさを提示しなければならない、ラグビーのベースは同じでも違ったアプローチをしないといけない。その限界が、自分の場合は5年でした。ユニークさを示せず同じスタイルで戦うことは、チームのためになりません。いかに変化を見出すか。変化をもたらしていくか、が大事なのです」
■「プレーオフ進出が最低限のミッション」
トッド・ブラックアダーHCのもとで、チームは4シーズン目を迎える。昨シーズンは6シーズンぶりのベスト4入りを果たした。
「トッドHCのもとでベースを作ってきましたし、過去2シーズンは若い選手を多く起用してきました。リーグ戦で40人以上の選手を使ってきているのは我々だけです。そういうユニークさを持って、この2シーズンやってきた。そのなかで、種をまいた選手たちが昨シーズンは中盤以降に結果を残し、チームの成長につながりました」
3月27日のコベルコ神戸スティーラーズ戦から6連勝を飾り、11勝5敗の4位でプレーオフトーナメントに挑んだ。準決勝で東京サンゴリアスに競り負け、3位決定戦ではクボタスピアーズ船橋・東京ベイに敗れた。
「プレーオフではプレッシャー経験値の差、ノックアウト方式の試合の場数に差が表われました。場数ですから、経験を積み重ねていくしかない。トップ4の壁に触れて、今シーズンどう生かしていくのかが我々の新たなチャレンジ。プレーオフ進出が最低限のミッションです。チームスピリット『猛勇狼士』を言語化したことで、去年よりも成長した姿を体現していきたい。トッドHCが新たなユニークさをどう表現していくのか、私も楽しみにしています」
選手として、スタッフとして、栄光も苦悩も味わってきた。勝つことの難しさと喜びを味わい、敗戦がもたらす苦みも噛み締めてきた。薫田の身体を貫く芯が揺らぐことはなく、東芝ブレイブルーパス東京を目ざす場所へと導いていく。
(文中敬称略)
(ライター:戸塚啓)
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