トッド・ブラックアダー | ヘッドコーチ
TODD BLACKADDER
ニックネーム | Foxx |
---|---|
生年月日 | 1971/9/20 |
出身地 | New Zealand |
星座 | おとめ座 |
略歴 | ランギオラ高校 |
代表歴 | All BacksCrusadersCanterbury |
在籍年数 | 3 |
トッド・ブラックアダーの物語
■「3年間やってきたことが実りつつある」
メディアの取材に応じるトッド・ブラックアダーHCは、しばしば「ワクワクしている」とのフレーズを使う。シーズン開幕前のこの時期は、誰もが胸を躍らせるものだが、HC就任後の積み重ねに手ごたえを感じているのだろう。弾むような声で話す。
「ここまで3年間やってきたことが実りつつあるというか、形になったのが昨シーズンのトップ4入りだったと思います。若手中心のメンバーを使いながら、いい学びができました。どういうことが機能して、どういうことが機能しないのか、ということを学べたのが収穫でした」
プレーオフトーナメントで勝利をつかむことはできなかったが、目標に掲げたトップ4位入りを果たした。得たものは多かった。
「過去6シーズンはトップ4に入れなかったということで、その部分での経験が足りなかったのかなと思います。準決勝のサントリー戦では、まだ自分たちを信じ切れていない選手がいたかもしれません。それは自分たちの能力が足りないからではなく、メンタル面に理由があったのだと思います。トレーニングで自分たちがやっていることが結果につながるんだ、試合に勝てるんだ、ということを信じきることが足りなかったと感じます。難しい試合を勝ちきるための跳ね返す力、つまりレジリエンスがもっと必要だなと」
S東京ベイ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)との3位決定戦では、若い選手を多く起用した。目前の勝利を追い求めながら、未来を見据えたのだった。
「チームの成長をつねに重視していて、S東京ベイ戦では若い選手たちにプレーオフという舞台を経験してもらいたかったのです。大きなプレッシャーを感じながらプレーすることで、成長につなげてほしかった。それは、これから始まる新シーズンにつながるでしょう」
チームは「猛勇狼士」のチームスピリットを掲げた。「すごく気に入っています」と、トッドHCは言葉に力をこめる。
「明確で直接的に、我々のDNAを示しているものです。その言葉とともに生きていくのは素晴らしいことで、すごく大きなチャレンジだと感じています。私の仕事は実際に選手たちがその言葉を体現できるようにすること。ワクワクしていますし、エキサイティングな仕事になると自負していますよ。それができれば、自分たちのパフォーマンスは向上していくと確信しています」
トッドHCの考えるブレイブルーパスの「DNA」とは、具体的にどのようなものを指すのだろう。迷いのない答えが返ってきた。
「スピリットとも一致していますが、スマートでイノベイティブなところでしょう。いいアイディアのもとでやり方を変えて、革新性をどんどんと打ち出して、知的にプレーする。そうやって魅力的なラグビーができれば、プレーする選手も楽しめるでしょう」
■温もりのある人間関係が、プレーに好影響をもたらす
2019年6月のHC就任から、3年以上が経過した。東芝ブレイブルーパス東京での仕事は、大きな充実感を得られるものだ。
「すごく楽しめています。このチームは日本人選手の割合が多く、そこは自分も誇りに思っていることです。いい選手が揃っていますし、選手たちの育成に関われるのは嬉しいことです。私がいつかこのチームを離れることになった際も、チームの成功が続くようにしたい。そのために、スタッフの育成にも携われればと考えています。明確な目的意識を持って、仕事をすることができています」
スタッフの育成に携わるとの思いを、トッドHCは就任1年目から実行に移していた。森田佳寿コーチングコーディネーターが話す。
「彼の監督就任1年目は、僕のコーチ1年目だったのですが、たくさんのことを任せてくれて、なおかつ、権限を与えてくれました。小さなことに動じなくて、懐が深い。人間的に大きくて、おおらかな人です。ラグビーから離れるとホントにいい人という感じで、僕たちの生活についてとか、どんなことを考えているのかとか、昨日何があったのかといったことを聞いてくれて、一人ひとりと向き合ってとことん関係性を築いていく。ひとりの人間として良好な関係を築いて、信頼されているなと感じることができるんです」
トッドHC自身は、こう話している。
「私自身はラグビー選手としてだけでなく、人間として人生のなかでいい判断ができるようになってくれれば、と考えながら接しています。このクラブからリーダーの資質を持った選手を、多く輩出できればと思います」
選手やスタッフとコミュニケーションを取り、一人ひとりの気持ちに寄り添い、ともに歩んでいく。温もりのある人間関係の構築は、グラウンドのなかにも好影響を及ぼす。森田が言う。
「そうやって培われた信頼関係があるからこそ、グラウンド上で厳しい要求ができるのでしょうし、選手たちもそれに納得できるんだろうなと思います」
■「自分たちが成長できる部分はたくさんある」
2020年から日本の、世界の景色を変えた新型コロナウイルスは、感染拡大と縮小を繰り返しながら、いまなお私たちの生活に影を落としている。トッドHCは「マスクを着けることに疲れましたね」と、苦笑いを浮かべた。
「様々なものに大きな影響が生じました。ラグビーは文化が大事ですが、お互いの家族と知り合って関係性を築いたりすることが、コロナ禍では難しくなっています。ただ、そういったことができなかったからこそ、大切なことをより感じることができました。たとえば、家族とともに過ごす時間です。小さなことだけど大切だよな、というものに改めて気づくことができました」
国内のスポーツに目を向けると、観客の上限が撤廃されたり、声を出しての応援が再開されたりしている。12月開幕のリーグワンでも、スタンドの熱狂が戻ってくることが期待される。
「試合のあとに対戦相手と握手をしたり、話をしたり、ファンのみなさんにサインをしたりということが、ここ数年できませんでした。そういうこともすごく大事だと感じていますし、観衆のみなさんが声を出して応援できる日が来ることを願っています」
チームは10月9日からプレシーズンマッチを消化し、先週、ついにリーグワンが開幕した。
「自分たちが成長できる部分は、たくさんあると思っています。選手たちはしっかりコミットできていますし、つねに向上したい思いでトレーニングをしてくれています。よりフィジカルにプレーして、より効率的にプレーすることを、もっともっと突き詰めていく。チャンスを生み出したら、確実に生かす。それから、マインドセットですね。勝ちきるためのメンタルの準備を進めていきたい。過去3シーズンで足元を固める作業をしてきましたので、引き続きプロセスの部分で一貫性を高めていきます」
自身にとってのラグビーを問われると、「単なるスポーツ以上のものです」と答える。現在は指導者としての喜びに触れる毎日だ。
「人生の経験を提供してくれるスポーツだと思います。自分自身を育ててくれるだけでなく、異なる文化に触れたり、異なる文化の人と出会ったり、色々な国に行ったりと、様々な機会を与えてくれます。競技として見れば、フィジカルな部分での激しい競争があり、戦術的な要素を持ち、身体のサイズの違う選手が同じグラウンドに立つ。たくさんの要素が絡み合っているのがラグビーで、とても面白い競技です。私自身は若い選手が成長していくこと、人間的に素晴らしくなっていくこと、東芝ブレイブルーパス東京がいいチームになるのを見るのが、とても楽しいのです」
そして、トッドHCは「ワクワクしていますよ」とほほ笑んだ。
(文中敬称略)
(ライター:戸塚啓)
メディアの取材に応じるトッド・ブラックアダーHCは、しばしば「ワクワクしている」とのフレーズを使う。シーズン開幕前のこの時期は、誰もが胸を躍らせるものだが、HC就任後の積み重ねに手ごたえを感じているのだろう。弾むような声で話す。
「ここまで3年間やってきたことが実りつつあるというか、形になったのが昨シーズンのトップ4入りだったと思います。若手中心のメンバーを使いながら、いい学びができました。どういうことが機能して、どういうことが機能しないのか、ということを学べたのが収穫でした」
プレーオフトーナメントで勝利をつかむことはできなかったが、目標に掲げたトップ4位入りを果たした。得たものは多かった。
「過去6シーズンはトップ4に入れなかったということで、その部分での経験が足りなかったのかなと思います。準決勝のサントリー戦では、まだ自分たちを信じ切れていない選手がいたかもしれません。それは自分たちの能力が足りないからではなく、メンタル面に理由があったのだと思います。トレーニングで自分たちがやっていることが結果につながるんだ、試合に勝てるんだ、ということを信じきることが足りなかったと感じます。難しい試合を勝ちきるための跳ね返す力、つまりレジリエンスがもっと必要だなと」
S東京ベイ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)との3位決定戦では、若い選手を多く起用した。目前の勝利を追い求めながら、未来を見据えたのだった。
「チームの成長をつねに重視していて、S東京ベイ戦では若い選手たちにプレーオフという舞台を経験してもらいたかったのです。大きなプレッシャーを感じながらプレーすることで、成長につなげてほしかった。それは、これから始まる新シーズンにつながるでしょう」
チームは「猛勇狼士」のチームスピリットを掲げた。「すごく気に入っています」と、トッドHCは言葉に力をこめる。
「明確で直接的に、我々のDNAを示しているものです。その言葉とともに生きていくのは素晴らしいことで、すごく大きなチャレンジだと感じています。私の仕事は実際に選手たちがその言葉を体現できるようにすること。ワクワクしていますし、エキサイティングな仕事になると自負していますよ。それができれば、自分たちのパフォーマンスは向上していくと確信しています」
トッドHCの考えるブレイブルーパスの「DNA」とは、具体的にどのようなものを指すのだろう。迷いのない答えが返ってきた。
「スピリットとも一致していますが、スマートでイノベイティブなところでしょう。いいアイディアのもとでやり方を変えて、革新性をどんどんと打ち出して、知的にプレーする。そうやって魅力的なラグビーができれば、プレーする選手も楽しめるでしょう」
■温もりのある人間関係が、プレーに好影響をもたらす
2019年6月のHC就任から、3年以上が経過した。東芝ブレイブルーパス東京での仕事は、大きな充実感を得られるものだ。
「すごく楽しめています。このチームは日本人選手の割合が多く、そこは自分も誇りに思っていることです。いい選手が揃っていますし、選手たちの育成に関われるのは嬉しいことです。私がいつかこのチームを離れることになった際も、チームの成功が続くようにしたい。そのために、スタッフの育成にも携われればと考えています。明確な目的意識を持って、仕事をすることができています」
スタッフの育成に携わるとの思いを、トッドHCは就任1年目から実行に移していた。森田佳寿コーチングコーディネーターが話す。
「彼の監督就任1年目は、僕のコーチ1年目だったのですが、たくさんのことを任せてくれて、なおかつ、権限を与えてくれました。小さなことに動じなくて、懐が深い。人間的に大きくて、おおらかな人です。ラグビーから離れるとホントにいい人という感じで、僕たちの生活についてとか、どんなことを考えているのかとか、昨日何があったのかといったことを聞いてくれて、一人ひとりと向き合ってとことん関係性を築いていく。ひとりの人間として良好な関係を築いて、信頼されているなと感じることができるんです」
トッドHC自身は、こう話している。
「私自身はラグビー選手としてだけでなく、人間として人生のなかでいい判断ができるようになってくれれば、と考えながら接しています。このクラブからリーダーの資質を持った選手を、多く輩出できればと思います」
選手やスタッフとコミュニケーションを取り、一人ひとりの気持ちに寄り添い、ともに歩んでいく。温もりのある人間関係の構築は、グラウンドのなかにも好影響を及ぼす。森田が言う。
「そうやって培われた信頼関係があるからこそ、グラウンド上で厳しい要求ができるのでしょうし、選手たちもそれに納得できるんだろうなと思います」
■「自分たちが成長できる部分はたくさんある」
2020年から日本の、世界の景色を変えた新型コロナウイルスは、感染拡大と縮小を繰り返しながら、いまなお私たちの生活に影を落としている。トッドHCは「マスクを着けることに疲れましたね」と、苦笑いを浮かべた。
「様々なものに大きな影響が生じました。ラグビーは文化が大事ですが、お互いの家族と知り合って関係性を築いたりすることが、コロナ禍では難しくなっています。ただ、そういったことができなかったからこそ、大切なことをより感じることができました。たとえば、家族とともに過ごす時間です。小さなことだけど大切だよな、というものに改めて気づくことができました」
国内のスポーツに目を向けると、観客の上限が撤廃されたり、声を出しての応援が再開されたりしている。12月開幕のリーグワンでも、スタンドの熱狂が戻ってくることが期待される。
「試合のあとに対戦相手と握手をしたり、話をしたり、ファンのみなさんにサインをしたりということが、ここ数年できませんでした。そういうこともすごく大事だと感じていますし、観衆のみなさんが声を出して応援できる日が来ることを願っています」
チームは10月9日からプレシーズンマッチを消化し、先週、ついにリーグワンが開幕した。
「自分たちが成長できる部分は、たくさんあると思っています。選手たちはしっかりコミットできていますし、つねに向上したい思いでトレーニングをしてくれています。よりフィジカルにプレーして、より効率的にプレーすることを、もっともっと突き詰めていく。チャンスを生み出したら、確実に生かす。それから、マインドセットですね。勝ちきるためのメンタルの準備を進めていきたい。過去3シーズンで足元を固める作業をしてきましたので、引き続きプロセスの部分で一貫性を高めていきます」
自身にとってのラグビーを問われると、「単なるスポーツ以上のものです」と答える。現在は指導者としての喜びに触れる毎日だ。
「人生の経験を提供してくれるスポーツだと思います。自分自身を育ててくれるだけでなく、異なる文化に触れたり、異なる文化の人と出会ったり、色々な国に行ったりと、様々な機会を与えてくれます。競技として見れば、フィジカルな部分での激しい競争があり、戦術的な要素を持ち、身体のサイズの違う選手が同じグラウンドに立つ。たくさんの要素が絡み合っているのがラグビーで、とても面白い競技です。私自身は若い選手が成長していくこと、人間的に素晴らしくなっていくこと、東芝ブレイブルーパス東京がいいチームになるのを見るのが、とても楽しいのです」
そして、トッドHCは「ワクワクしていますよ」とほほ笑んだ。
(文中敬称略)
(ライター:戸塚啓)
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